オンボロ寮の2人目ちゃん 2
女の人が血塗れで鏡の間で倒れていたと言う噂は、あっという間に広がった。
此処は男子校で、同じ入学式の日に馬車に連れられて現れたオンボロ寮の魔力の無い子1人だけが女の子だった。女の子の制服なんて無いから、ブラウスは一般的な女性用の物を、ズボンとジャケットは他の男子と同じ物を支給されていた。魔物のグリムとニコイチな扱いの16歳の女の子ユウ。彼女はグリムに追いかけられ血溜まりに倒れる女性を見ていなかった。見ていないから、もしかしたら同郷かも知れないとちょっと期待した。黒い髪に黒い目だと皆が噂していたから。
此処は英語が共通語で、ユウはギリギリ話す分には何とかなるけれど苦労していた。授業にもなかなかついて行けない。だから自分に近い友達が欲しかった。分かってくれる誰かが。あの惨状を見ていれば、その期待よりも先に哀れだと思ったかも知れない。怖いと思ったかも知れない。けれど其れを見ていない彼女には、とても想像出来ない。稀代の魔法士になれるような要素の有るかも知れない生徒達の様な想像力も、無いとは言えないけれど、思い浮かべられなかった。だから、友達になりたいと純粋に願った。
だから、回復した彼女がオンボロ寮で暮らすと聞いた時は喜んだ。大急ぎで掃除だってした。
***
先日、血塗れで鏡の間に現れた彼女は一週間後に目を覚ますと、自身の持っていた薬を飲んで、即座にもう回復したので話を、と申告した。実際に顔色も健康的で血液が足りていない様にも見えない為、学園長室で彼女の聞き取り調査が行われる運びとなった。
「一先ず、回復して良かった。私はディア・クロウリー、このNRCの学園長をしています」
「回復まで置いていただき感謝します。私はホグワーツ魔法魔術学校の教授助手をしております、アキ・タバサキと申します。さて、状況の擦り合わせを行いたいのですが…私はNRCと言う場所を存じません。貴方…Mr クロウリーも同様でしょうか?」
さっさと此処が何処なのかを結論付けたいアキは自ら切り込んだ。
「ええ、私も同様です。しかしNRCを知らないとは…どれだけ遠くから来たのです?」
クロウリーは仮面の奥に目を隠している為、開心術を使えない。食えない男だとアキはこっそり感心した。
「其れはこちらの台詞です。ホグワーツは千年の歴史を誇る世界的な魔法学校の1つ…其れに…私が拘束もされていないとなれば…此処にはホグワーツ及びにイギリスからの連絡が入らない程の遠方だと、言う事になりますね」
遠方とは言ったが、互いにどれだけの田舎者なのかと言い合っているも同じだ。そしてわざわざ拘束されていても可笑しくはない人間だと匂わせて様子を見るつもりだった。
「拘束とは、穏やかでは有りません…が、イギリスとは?」
「ホグワーツの在る国名です。世界的にも大きな国ですが…では日本やアメリカは?」
あっさり流されて拍子抜けだったが噯気にも出さず話を続けた。
「聞いた事も有りません…逆にお聞きしますが、薔薇の国、夕焼けの平原、輝石の国…聞いた事が有りますか?」
互いに並べた国名に聞き覚え等無い。これはつまり…。
「いいえ。はあ…つまりは違う世界と捉えるべきなのでしょうか…さすがに異世界は初めてだな」
本音だった。
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