私ならどうするか 1
まあ、異世界トリップとか読み漁った人生でしたわ。何なら自分ならどうするだろうって考えてみたりさ。かなり楽しんでましたわ。
けどね、今のこの状況は笑えない。
取り敢えずの住処として与えられたのは喘息患者である私には厳しいボロい家。そこにちょっとした日用品とかリネン室から持ってきたらしいシーツや夕飯…魔法があるならベッドだけでも綺麗に出来ないのかを聞いても、どうやら面倒くさいらしい。明言した訳じゃあ無いけれども、アレはそうだった。
喋る猫もウザい。押し付けられたんだと分かるのがもっと嫌だ。誰かに何かを強要されるって嫌いなんだよ。だから、最小限の面倒を見て放っておこう。
ゴーストもウザったい。ガン無視した。これくらいのゴーストなんざ怖くなかった。ジャパニーズホラーの怖さに敵うものか。
家の中は汚過ぎで寝る気にもならないので、なんとかバスルームの触るところだけ掃除して水シャワーを浴びて、外に出た。モニュメントみたいに置いてあった庭石を雑巾にしたその辺のボロ布で拭いて、シーツに包まって寝た。
きっとあの家で寝てしまったら発作が起きる。其れは嫌だった。
***
「ちょっと?!何でこんな場所で寝てるんです?ちゃんと部屋はあるでしょう?」
なんて声に起こされて、ゆっくり体を起こして石に座った。体がバキバキで寝違えてる。
「埃っぽくて、黴びっぽくて外の方がマシだと判断したので外で寝てたんですが…貴方は、あの汚過ぎる部屋で寝れるって言うの?」
信じられない神経だと思って学園長ディア・クロウリーを見上げた。
「自分で掃除したら良いでしょう?全く外で寝るなんて信じられません。ああ、とにかく貴方の仕事を伝えに来たんでした」
学園内の掃除を命じられて、箒と塵取りに雑巾と水入りバケツを持って、支給されたスラックスにカッターシャツ、ジャケットと言う掃除に向かない格好で言われた場所へ向かった。雇用契約書を下さいって一応は言っておいたけど、あんまり酷い条件じゃないと良いな。
なんか知ってるキャラクターが像になってて、目を瞬かせた。自分の推しヴィラン及びヴィラネスが勢揃いで、気持ちがちょっと持ち直してきた。
「アースラ様に、スカー様にハデス様…マレフィセント様も…ふうん、良い趣味じゃない」
なんて上がって来た気持ちもスッと萎えた。
ハートのペイントをした軽そーな奴がーーイケメンでは有る、ムカつくけどーーわざわざ見下しに来たらしい。こう言う手合いは無視はハイハイって軽く流せば良い。客商売じゃないから愛想笑いとか要らんだろう。
まあ、火を吐く猫のグリムが挑発に乗って喧嘩を初めてしまって、ギャラリーまで出来てた。あー、結構みんな顔面偏差値高いな。そんでケモ耳ケモ尻尾が居て驚いた。凄くない?筋肉質なケモ耳ケモ尻尾ってドストライクに好きやぞ?とか考えながら、喧嘩する奴らを横目に掃除を続けた。暑くてジャケットは脱いでハデス様の足元に置いた。ハートの女王の像を雑巾で拭いていた時…左頬、首から背中に熱さと痛みを感じた。
「っ…はぁ…」
この痛みは火傷だろう。そう判断してシャツのボタンを感覚の無い震える指で外して肩を剥き出しにして、患部を覗き込んだ。
「っ、これは中々…」
穴だらけのシャツのままで、ジャケットを胸の前に抱えた。
「…ねえ、表皮の60パーセントを火傷したら致命傷だってご存知?私がこの程度の火傷で良かったわね…まあ深度によるのだけど…はあ、どなたか保健室の場所を教えてくれない?」
そう野次馬に呼び掛ければ、近くに居たケモ耳の生徒が二人、付き添ってくれる事になった。そんな時になって学園長がようやく現れて喧嘩していた一匹と一人を叱って、私は監督不届きだと言われた。
「はあ、お叱りは後で良いですか?私って怪我人なんですよ」
そう言って患部をクロウリーに晒した。
「え?!ああ、何て事だ!これは酷い…早く保健室に…」
「彼らが連れて行ってくれるそうなので、後は頼みますね、学園長」
***
案内してくれたのは、ウィリアム・リュカシとマーカス・リュカシと言う双子の獣人だった。今年入学した一年生らしい。
「アンタの我関せずとって感じでずっと掃除してたのが、オレは一番面白かったよ。でも、まさかこんなとばっちりが来るとはツいて無かったな」
そう言って魔法で氷を出してくれたのがウィリアムだった。
「本当に、ついてないわ…有り難う。魔法って便利ね」
氷を受け取って頬を冷やしながら歩いた。
「もう少し、お前は周りを見ておくべきだった…悪いのは、当然あいつらだが…よりによって…女にこんな怪我させて…」
後ろから付いてきてくれているマーカスが、溜め息混じりでそう言った。
黒がベースで黄土色と白いメッシュが入った髪は、ウィリアムの方が白い色が多めで、マーカスは黒い色が多めだった。大きな黒い耳の内側には白い毛が生えていて、尻尾はウィリアムは尻尾の先が白く、真ん中は茶色で根元が黒。マーカスは尻尾全体が白い。
「まあ、もう済んだ事よ…後は学園長がどの程度の罰を与えるかで、この世界の常識を測る一助になるわ」
***
つづく
2020/08/23
13/20
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