生で食う?
この日、大食堂では一向に減らない料理の皿が一つだけ有った。
其れを美味しく食べているのは全員がオクタヴィネル寮生だったので、これは人魚向けかな、と納得して青ざめていた。

「あ!フロイド先輩、美味しそうなの食べてますね!」

「うん、美味しいよ〜。小エビちゃんも食べる?」

「食べます食べます!久々の茹でたタコー。あ、これカルパッチョだ。嬉しい!」

「うげ!監督生、お前…そんなもん食べるの?」

「え?うん!タコって美味しいよ?生を薄ーくスライスしても、茹でてこうやっても煮ても揚げても美味しいよ?ウチの国じゃ人気すぎて、ちょっと高いんだよね…御馳走だったわ」

「小エビちゃんもタコ好きなんだ。一緒だねえ?」

「ふふ、ちなみにウツボもサメもイルカも好んで食べます!山沿いに住んでたので海産物は御馳走でした!」

「山?何食べてたの?」

「え?普通にイノシシとかシカも食べますし…まあその辺の草も毒さえ無ければ大体は食べますね。毒があっても毒抜きとか毒を避けて食べちゃうんですけどねえ…フグとか毒キノコとか。あ、ヒガンバナって言う全てが毒であるリコリスの根っことかは食糧難の頃に食べてたそうですよ。偶に毒抜き足りなくて死ぬんですけどねえ…」

「ええ?小エビちゃんの国ってこわ…」

「水不足も大雨の水害も、飢餓も戦争も2600余年には色々有りますからねえ…生きる為に得た先人の知恵ですね。取り敢えず食べられるもの無くなったら、食えるモンは食べてみるって事で乗り越えて来たんですねえ…基本的に水不足は滅多にない土地だったので、水にさらしたり茹でたりを繰り返して行けば、不味くても食べられない物はあんまり無いですよ?」

「監督生?流石に草は嘘だろ?」

「今日の夕飯はスベリヒユのお浸しとマタタビの新芽の炒め物、シロツメクサの揚げ物、ヨメナご飯ですけど?」

「お前、本当に草食動物じゃん!」

「違いますー、雑食ですー!肉も魚も甲殻類も大好きですよ?腐って無ければ大体は平気です」

「こっち来る前から雑草食べてたんスか?」

「そうですよ?庭の半分は畑にしてまして、雑草も生えるの。勿体無いから、食べられる物は食べてました。オヤツに出来る草はそのまま食べて、殆どは茹でて灰汁抜きして炒めたりするんです。」

「なんか、アキくんに親近感わいたっス。でもスラムってわけじゃ無いって言ってたような」

「スラムはウチの国無いよ?私の家が少し貧乏だってだけですねー、もっと貧乏なら国の援助で、ちょっと楽だったんですが…ギリギリ駄目なゾーンでしたね。畑で採れた野菜と草、稀に親戚が山で狩ってくれたお肉、ニワトリの産む卵に時々つぶしたニワトリ…特別な日にはタコのお刺身とイノシシの良い部位を焼いて…そんな風でしたからね。まあ、人ん畑から捨てられてるのを勝手に盗ってましたけどねえ…」

「結構逞しく生きてるんっスねえ…そういうの嫌いじゃないなあ」

「え?本当ですか?祖国でも中流階級には、この生き方って笑われるんですよねえ…こっちだって生まれが選べるなら金持ちが良かったに決まってるじゃ無いですか」

「そうっスよ!誰が好き好んで貧乏に生まれるかって話っス…」

「本当だよねえ…法律犯して食い物調達してるのだって、好きでやってた訳じゃないですし…其の闇流通食材を買えないとウチの家族飢えるんだけど?って言うね?」

「ああ…分かるなあ…其れ逃したら盗むしか無いんスよね…」

「そうそう…でもウチの国の良いところはさ、犯罪犯して捕まったら、国に更生施設に入れられるんだけど、そこでは三食の食事が食べられる!最終手段は犯罪者になって、ご飯と寝床を得る…ただし人権はあんまり無いって言う」

「飯と寝床が有るだけ良いじゃ無いっスか?」

「しかも、更生施設の作業にはスゴく少ないなりに賃金が発生し、小遣い程度とは言え、お金が貰えると言う幸せ…」

「え!アキくんの国良いっスね!」

「男には生きやすい世界だよ!女は…まあ、強く無いと搾取されやすいし、窃盗罪と性犯罪は同じくらいの扱いだし、女は同じ仕事しても給金安いし…子供産んだら殆どの人は母親一人で育ててるし…いっそ自分は虎だ、強いって思わなきゃ、いや、思ってても辛いんだよなあ」

「え?!いやいや、ハイエナですら家族で子育てするけど…?!」

「知ってます。ハイエナは老若男女集まって生きますからね。良いですよねえ…理想的」

「小エビちゃん!ウツボだって一人きりになんてしないよぉ…うう」

「ああ、そうなんです?ふふ、ライオンもオオカミも…群れで暮らす生き物ってみんな、群れで子育てするから、子供の時はそう言う生き物に成りたかったんですよね…でも成れないって分かってたから、そう言う肉食獣の糧に成りたいって思ってたなあ…」

「小エビちゃん、死ぬの?!」

「いやだな、人間を喰らった獣は人間の勝手で害獣扱いされて狩られると知った時、諦めましたよ。そんな理由で私が身を捧げた生き物が殺される何て、意味分からないもの」

「アキくん…サバナクローに来たら良いんじゃない?俺たち、種類は違えど殆どがパックで暮らす獣人だから、夢が叶うっスよ!」

「小エビちゃん!オクタヴィネルの方が良いよ!アズールはタコだから一途だし、ジェイドも愛情深いウツボだし、群れで暮らすシャチも居るし、ねえ、おいでよお」

「でもウツボって一夫多妻だからなあ…サバナクローが優勢ですねー。オオカミは夫婦でずっと連れ添うのよね…
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