1-3

彼女の言う通りだと内島は分かっていた。けれど其れを上層部に言えるヤツが居ない。

「……ごもっともです。ですが上層部は其れを解っていません。」
俯いてしまった内島に濃紫は首を傾げた。
「なぜ分かって居て誰も言わない?其れを聞き入れない様なヤツなの?」
「上層部に意見を言えるワケありません……」
意味が分からないとばかりに濃紫は首を左右に振り、声を荒げて詰め寄る。
「ふざけないでくれる?其れって貴方達が私達を殺してるのよ!アンタ達が言えないなら連れて行け!そいつらの所に、私が言ってやるわ!」
「下っ端の私では無理です!ですが私の上司と今一度、話します!我々でなんとか出来る事は無いか模索中なんです!」
少し涙目になった内島の言葉に、濃紫は深い溜息を吐いて額を右の掌で覆った。
「……そう。せめてメンタルケアや物資の補給くらいは早急に出来るようにした方が良いと思うけどね。人間が一人きりって危ういわ。其れに、戦争の決まりとしてネガティブリスト、所謂やってはいけない事リストは確りと書いておく事ね。リストにない事は全てして良い、ってのが軍のルールよ。ただ、そうね……人間ってルールの隙間を縫ってとんでもない馬鹿をやる生き物だから、其れを念頭においた方が良いわ。」
書類を封筒に入れながら、濃紫は最低限必要だろう事を伝えていく。
「わ、分かりました……そう、何ですね。ネガティブリストなんて知りませんでした。」
「私が知っていたのは偶然だから。まあ、長々とごめんなさいね。じゃあ案内をお願いしても良いですか?」

「はい。少し壁に寄って下さい。」
掌サイズの機械を取り出した内島に言われ、素直に部屋の隅に立った。丁度何も置かれていない位置に機械を置くと、数歩下がった内島がリモコンを操作する。
機械から縦に楕円の青白い光の輪が広がった。
ーーーしっかりカーテン閉めてある訳だ。

「こちらは転移装置です。ここからは濃紫様お一人でお願いします。行った先に、こんのすけと言うサポート役の管狐が居りますので、後はこんのすけが引き継ぎます。」

「分かりました。それじゃあ後は宜しく頼むわよ。」

青白い光を通り抜ける。
その先にあったのは思っていたより大きな純和風の御屋敷だった。



***

2022/09/26 最終更新