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教室に戻り昼ご飯を食べながら私は震えていた。午前の種目が全て終わってしまった。ということは次は、部活動対抗リレーである。

呑気に会話を交わす友人達や写真を撮り合うクラスメイトを私は異世界を見るような目で見ていた。緊張するとは思っていたが、まさかここまでするとは思わなかった。先程出た玉入れなんてまるで昼休みにドッジボールをする感覚でやったというのに。

ちなみにだが、私達のクラスの玉入れは学年七位という微妙な結果で終わった。ボールコントロールの悲惨な私が足を引っ張っていた可能性は否めない。学年競技の綱引きの方は四位とかなり奮闘した結果になった。こちらはクラス全員が出るから緊張することもなく、全力を出し切れたと思う。勿論牛島君を眺めることも忘れていない。クラス対抗なので表立った応援はできないが、誰よりも強く綱を引く勇姿はしっかりと目に焼き付けてきた。


次こそが今日最後の難関、部活動対抗リレーだ。なんと昼休憩の終わったすぐ次という一番緊張のしやすい順番にプログラムされている。流石に部活数の多い白鳥沢では三ブロックに分けられており、一ブロック、二ブロック、三ブロックそれぞれで優勝した部活が部費三万円を贈呈されるという。運動部が出るのが一ブロックと二ブロックであり、その中でも私達バレー部は一ブロックを走る。つまりは一番最初だ。これがどうして緊張せずにいられるだろうか。「陸部は二ブロックだから優勝あるかもな」バトン練習の際にふと耳にした言葉が頭を過る。

本当に私でいいのだろうか。私はきちんと走れるのだろうか。私はちゃんと、牛島君のことをただの次のランナーとして見られるだろうか。不安は胸の中で渦を巻く。気付けば昼休憩は終わりの時間に近付き、直後に競技を控えている私は周りより早く教室を出た。そのまま集合場所に向かう途中で、ふととある人と目が合う。

「あ」

思わず声に出た。私と目が合ったのは、あの体育館を使っていたメンバーである白布君だったのだ。私達は早足になるでもわざと遅く歩くでもなく集合場所へ向かった。正直、今の彼とは顔を見て話せる自信がない。ただでさえ嫌われている上に、私は白布君に言われた「本気でやれ」を全うできるかわからないのだ。

段々と部活動対抗リレーの選手の集合場所が近付いてくる。牛島君が、寺島君が、神田君がいる。競技の始まりはもうすぐだ。私はどうやって牛島君への気持ちを消して走ればいいのかわからない。目眩すらしてきた頃、斜め前を歩く白布君が口を開いた。

「俺は、牛島さんを信じてる」

突然何なんだろう。そう思いつつも、私の目は白布君を捉えて離さない。

「だから牛島さんの選んだあんたを信じる」

その瞬間、今まで私の心に立ち込めていた靄が晴れた気がした。

「……うん!」

そう答えると、私は牛島君達の待つ集合場所へ小さく駆け出した。
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