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「とにかく試してみる方が早い」

そう言ったエースに引っ張られ、私は船内を駆けている。勿論今掴まれているのは服の上からだ。エースはとある部屋の前に辿り着くと、ノックもなしにドアを開けた。

「マルコ!」
「何だよい」

マルコと呼ばれたその男性を私は見たことがない。でも個室を持っているくらいだから隊長なのだろうか。マルコさんはエースを見た後、私に視線を移した。

「自分の女見せつけにきたのか?」
「違ェんだ! 名前、マルコに触れてみてくれ!」

初対面の男性にいきなり触れるのには抵抗があるが、エースが促すので私は仕方なくマルコさんの手に触れた。するとマルコさんは持っていたペンを手から落とす。

「……どういうことだよい」
「こんな悪魔の実、なかったか!?」

私が離れると、マルコさんは本棚から一冊の本を取り出した。分厚いその本をめくり、マルコさんは一つのページを指差す。

「嬢ちゃんが食べたのは恐らくこれだよい。ウミウミの実、海になれる力だ」
「すげェ力じゃねェか!」

盛り上がっているエースをよそに、私は事態が分からずにいた。海になれると言われても、特に恩恵めいたものは感じない。炎になれるエースの方が戦闘において優位ではないだろうか。すると私の考えを読んだようにエースが口を開いた。

「能力者は全員海が弱点なんだ! この能力がありゃパワーバランスがひっくり返っちまう!」

そう言われても私はピンと来ないのだが、「とにかく行くぞ!」と私の腕を引っ張ったエースによって私はこの場を後にすることになった。マルコさんにお礼を言って、私はマルコさんの部屋を出る。次に連れられたのは、何とオヤジさんの部屋だった。私が心の準備をする暇もなく、エースは勢いよくドアを開ける。

「オヤジ! 聞いてくれ!」
「相変わらず急な奴だ……」

オヤジさんの前に引きずり出され、私は身を縮める。

「名前はウミウミの実の能力者なんだ! 見ててくれ!」

そう言ってエースは自分の掌と私の掌を合わせると、脱力したように床に倒れ込んだ。オヤジさんは「何やってんだ……」と呆れたようにエースを見ている。やはりこれだけではダメだったのだろうか。私がオヤジさんを見つめると、オヤジさんは酒を一口飲んでから口を開いた。

「まァ本当にウミウミの実の能力者だっつーんなら世界中が欲しがるだろうな……勿論海軍からも狙われることになる。だがその力でウチに貢献するんなら、ウチに置いてやってもいい」

オヤジさんとエースの視線が私に注がれる。これは返事を求められているのだと理解した私は前のめりになりながら口を開いた。

「貢献します! だからこの船にいさせてください!」
「グラララ……名前、お前の乗船を認めよう」

私は思わずエースと顔を見合わせた。「やったな名前!」そう言って手を取り合ったエースが再び床に倒れるのを見て、「しょうがねェ奴め」とオヤジさんが笑っていた。