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ドレスローザの時からそうだ。おれはいつも脇役。大事な所は麦わら屋が持って行く。だとしても、脇役の相手がビッグマムというのは重すぎやしないだろうか。
先程からいくら攻撃を与えても襲ってくる老婆を前に、心が折れてしまいそうだ。ビッグマム一人を二人で相手どってこれなのに、カイドウと麦わら屋はどうなっていることかわからない。
不意に、名前の顔が蘇る。麦わら屋を助けてほしいと縋ったあの表情。名前は、おれの強い所に価値を見出しているのだろうか。おれが強いから、おれを好いているのだろうか。
「……ハッ」
知らず知らずのうちに、名前がおれを好いている前提で話をしてしまった。そんなこと、本当かどうかわからないのに。でもその気配はなかったか? 名前はおれに気がある。もっとも、麦わら屋を助けるどころかビッグマムに負けて敵を増やしかねないおれを、まだ名前が好くかはわからないけれど。
考えるのはやめだ。能力と体力の限界が来て、頭にエネルギーを使いたくなくなってきた。名前がおれを好いているかは、ビッグマムを倒した後直接聞けばいい。海賊なんだ、脅したって聞いてやる。
おれは全ての力を振り絞り、能力を覚醒させた。おれの体の中に、コラさんの魂がともるような温かみを感じる。それから、名前の手の温かさも。
「これはおれの大好きな人二人の力だ……!」
ビッグマムが目を見開く。次の瞬間、おれは立ってはいないだろうな。でも、不思議と心地いい。
「”凪”!」
ビッグマムがその巨体を城の奥へと沈めていった。おれはそれを見届けて、地面に崩れ落ちた。