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 城の通信手段でみんなが勝っているとわかった。なんとあのビッグマムも倒せたのだそうだ。確実に、勝機が訪れている。

 私は諦めるのではなく、どうやって空き部屋から脱出するかを考えていた。下手に出て強敵と遭遇したら、今の私には倒せない。そっと扉を開けたところで、強烈な匂いと煙にむせ込んだ。

「火事……?」

 もう、ルフィが勝つ勝たないの問題ではないのかもしれない。結果がどうあれ、この城とともに心中しようとしている誰かがいる。思わず扉を閉めそうになった時、急に水流が現れた。能力者である私がどうにかできるはずもなく、無力に流されていく。水流の終焉地が能力者のたまり場になるなら、そこでは物凄い戦いが起きそうだ。

 抗えず城を流されていると、不意に誰かに手を掴まれた。海賊らしくない、弱い力だった。視線をやれば、ローがこちらを見ている。睨んでいる、と言った方が正しいかもしれない。満身創痍の体をして、それでも私を流すまいとしてくれているのだ。私もローの手を握り返した。決して離れないように。濁った水の中で、私達の手は確かに繋がれていた。

「ぷはっ」

 水が去り、私はなんとか息をする。どうやら水は火を鎮めるためのものだったようだ。手はいまだ繋いだままになっている。そんな私達を見て、ユースタス・キッドが唾棄した。

「能力者同士で助け合ってどうすんだ」

 そう言うキッドは、非能力者の部下に助けられて無事だったようだ。私達はどちらからともなく顔を見合わせたが、すぐに視線を逸らして終わった。しかし、決して気まずいものではなかった。