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「ハートの海賊団と同盟を結ぶ〜!?」

ロビン達と合流すると、ルフィは事のあらましを告げた。とは言っても結果を伝える一言のみで、言葉足らずなのは相変わらずだ。なるほどさっきはこの話をしていたのかとトラ男君を見るとそれに気付いたらしい彼と目が合った。私は慌てて目をそらす。どうしてこうなってしまっているのか、私にも理解できない。

「つーか何で名前まで驚いてんだよ」
「だって話まではよく聞いてなかったんだもん……」

その理由をここで説明する必要はないだろう。トラ男君がまた意味ありげな視線をこちらに投げかけていたが、気付かないふりをした。正直怖すぎるのだがこの得体の知れない七武海と関わりたくない。ナミやウソップはルフィの安易な決定を止めたがっているが、こうなったルフィの意志を覆すのは不可能だと知っている。さらに、いつの間に身に着けたのかルフィの仲間を煽てる一言によりナミやウソップは懐柔されてしまった。ビビり同盟の一員としては大変不本意である。

「おれは一足先に研究所に戻る。残りの仲間もしっかり説得しとけ」

こうして私がただ見ている間に同盟は成立し、私達は四皇を倒すという途轍もない計画に巻き込まれたのだった。「まったく、名前も何か言ってくれればいいのに」と言うナミに笑ってみせる。今回私が何も口を出さなかったのは、ルフィが頑固だと知っている以上にトラ男君が関わっているからなのかもしれなかった。私は、刀を持って遠ざかろうとするトラ男君にそっと声を掛ける。

「無事この島を出られたら、さっきから私のことずっと見てる理由教えてよね」

自意識過剰な女だと思われただろうか。それでも、トラ男君にガンをつけられる理由など私にはないのだ。トラ男君は了承したのかしていないのか、黙って鼻を鳴らしただけだった。私はトラ男君に背中を向け、ルフィ達の元へ走り出す。いよいよ攻撃開始だ。


戦闘に関してはまだまだ未熟者だが、トラ男君のイメージしていた攻撃はこんなものではないとだけは言い切れる。ルフィを筆頭に、ロビン、フランキー、私は派手に研究所へと乗り込んだ。諸悪の根源の幼馴染が衝突の瞬間に私のことを掴んでくれなければ、私は戦艦に衝突してそのまま死んでいたことだろう。空を飛べるロビンの能力が羨ましい。なんとか雪原に降り立つと、私達は並んで構えた。これではまるで悪役のようだと思いながら。

正面潜入では私の出る幕はない。ルフィと共に降り立ったため最前列で構えていたものの、やることと言えばみんなの補助である。もっとも、ルフィやロビンに補助など必要ないのだけど。素早く後ろに下がった私は、研究所を破壊するみんなを見守った。海軍まで加わりこの場はまさに戦場である。様子からすると海軍までトラ男君の被害を受けていて、本当にヤバい人と同盟を組んでしまったという思いがより強くなった。

「ルフィ!」
「おう!」

マスター・シーザーの登場を機に、私はルフィへ触れる。これでルフィはいくらかシーザーを誘拐しやすくなったはずだ。隠密行動ができないルフィとはいえ、敵の意表を突くのは得意である。

「捕まえたァ〜!」

シーザーが気付いた時には、シーザーの体は武装色の覇気を纏ったルフィの体で覆われていた。これで任務完了かと思いきや、流石三億の賞金首というだけあり能力を巧みに使った反撃が繰り出される。しかし、いいのか悪いのか毒に慣れきったルフィには効かなかった。私の幼馴染もとんだ化け物になってしまったものである。その次にルフィがシーザーを捕まえ直したのは覚えているが、不思議とその後の記憶が私にはないのだった。