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好きだと自覚すると、むず痒いような、照れくさいような気持ちになった。もし私が治に告白されていなければ、私は到底治に好きだと告げたり治と付き合うことなどしないことだろう。

というか、無事約束の日を迎えて治と付き合うことになっても私が治に好きだと言えるかは怪しい。治の優しさに甘えて、治が告白してきたから付き合っていますという体で一緒にいるのではないだろうか。なんとずるい女だ。相手が自分のことを好きかも分からない人に、私は到底告白しようなんて気にならない。みんなよくできるものだ。治も、結構な勇気を出して私に告白してくれたのだろうか。そう考えると、なんだか恥ずかしい。私は治が完全にいなくなったのを確認してから教室に戻った。

「名前どこ行ってたんー?」
「あ、ちょっと立ち話」

嘘はついていない。友達も私が何をしていたのかは左程興味がなかったようで、すぐに彼氏の話に戻った。この間デートで映画を観た話、公園でただ駄弁っていた話。今まではどれも私とは違う世界の出来事だったのに、一緒になって興奮してしまうのは何故だろう。友人達の話を聞きながら思う。私も早く、治の彼女になりたい。

「名前も早く彼氏作ればええのに〜」

ちょうど友達の一人にそう言われたものだから、私は思わず返してしまった。

「月末にできる予定」
「えっ!?」

その反応に、友人達には治とのことを話していなかったことを思い出す。私は友人達の驚いた視線を受けると、少し迷った後観念して話すことにした。

「治に告白されて、好きやないから無理言うたら一ヶ月以内に好きな人できんかったら俺と付き合え言われて。結局他に好きな人はできんかったけど、治を好きになってもうた」
「何やそれ、治ってそんなこと言うんか!」
「名前も案外単純やなー」

今まで恋バナに参加してこなかった私の浮いた話に友人達は盛り上がった。きっと友人達も私のことを応援してくれるだろうから、月末には私も彼氏持ちとして話に加わることができる。

「月末て、名前は治が決めた一ヶ月後が来るまで待つつもりなん?」
「え? うん」

思ってもみなかった指摘に、私は歯切れ悪く頷く。すると危惧していた通り、鋭い指摘が友人から飛んできた。

「名前も好きなのにそれ言わんで自動的に付き合える日を待つって、ずるない?」
「そ、それは……」

言葉に詰まっている私を置いて、他の友人達も「せやせや!」と盛り上がっている。治とのことを打ち明けて味方になってくれるかと思いきや、彼女達は司令官であったらしい。

「治にだけ告らせてずるない? 名前も告白しよ!」

こうして、気付いたら期日が来る前に私が告白する流れになっていたのだった。