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無事に二日が過ぎ、私の包帯は全て取れた。この間戦闘はおろか訓練すら行っていないので今日の私は一段と弱いことだろう。敵地に着き、早速船の出口へ向かおうとする神威さんの隣に並ぶと私はそっと話しかけた。

「あの、神威さんは私のことを護ってくれるんでしょうか」

勿論あの晩のことを踏まえての発言である。「護る」の目的語が私であることは昨日副団長に確認済みだ。しかし神威さんから向けられたのは甘い目線ではなく、ジトリと睨むような視線だった。

「それ、第七師団の団員としての発言なら殺すけど」
「ヒッ」
「冗談だよ」

思わず息を飲み込んだ私に神威さんは笑う。神威さんの冗談は時々冗談では済まされないから怖いのだ。

「じゃあ……あの……私……」

どうしたらいいんでしょうか。その言葉を読み取ったように神威さんは目を細めた。これ以上のことを聞くにはあまりにも神威さんの内部に立ち入ってしまうとわかっている。でもあの言葉の意味を知るにはそれしかないこともわかっている。目の前で船の扉がゆっくり開き、今回戦場となる星の乾いた土が見えた。

「お前は俺の過去に入ってこなくていいんだよ。知られたくないとか信用してないとかじゃない。ただ過去は過去のことだから、お前を巻き込む必要はない」

神威さんは真っ直ぐ前を向きながら言った。遠くから立ち込める風で、神威さんの前髪が大きく揺れた。

「阿伏兎から何を言われたか知らないけど、お前がそんなに深く考える必要はないよ。困らせるために言ったわけじゃないしね」

じゃあどうすればいいのだろう。二度目のそれも読み取ったように神威さんは笑った。

「お前はお前のやりたいようにやればいいよ。俺が護ってあげるから」

神威さんはそれだけ言って敵地に降りると、敵へ向かって走り出した。その背中を大勢の団員が追う。神威さんの言葉に呆然としていた私は慌ててその最後尾を追いかけた。


その日の戦闘は病み上がりにしては上出来、というところである。二日のブランクを踏まえ、私は前のように最後尾で戦い、怪我をしている敵ばかりを狙って戦地を走った。船に戻るのが団で一番最後なのも少し前に戻ったようだ。相変わらず神威さんは出入り口で私を待っているが、今日はその視線は冷たくはなかった。そして団長が離陸の合図を出して自室へと戻ってしまう前、私は団長に一言囁いた。

「あの、今晩もまたあの部屋で待ってもらっていいですか」

クスリと笑って振り向いたのが、神威さんの返事なのだろう。