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家族とは何だろうと考えたり、親がいないことを寂しいと思ったことはない。ただ私の人生を滅茶苦茶にした明星の連中が許せなかった。

第七師団の船が明星に降りると、私は団員達と一緒に走り出した。普段最後尾を遅れないようについて行く私が先頭に近い位置を走っているのは珍しいことなのだが、皆目の前の戦闘で頭がいっぱいで誰も不思議には思っていない。先頭の団長の目の前、私達の向かう先に明星の部隊が見えた。戦闘開始だ。

その瞬間、私は何も考えずに暴れまくった。第七師団では下っ端でも夜兎は夜兎だ。私の蹴りや拳はなかなかに効いたようで、明星の連中は派手に飛んで行った。私はもう自分の力を過信したりはしていない。これは私が強いのではなく、明星の連中が弱いのだ。そう思うとこんな奴等に迫害を受けていた自分が情けなくなった。私はさらに戦い続け、奥へ奥へと進んだ。細かいことは何も考えられない。ただ拳をぶつけさせてくれる相手が欲しい。

そうやって何人もの敵を相手取ったところで、段々と相手が手強くなっているのを感じた。要するに今まで私が倒してきたのは捨て駒の雑魚だったのだ。これまでのように何人も相手取ったものの、予想以上の戦力に私は苦戦する。指は既に何本か折れ、拳を作るのがやっとだった。相手の攻撃を避けるのにも限界がある。朦朧としてきた頭の奥で、私はまたこの星の奴等にやられてしまうのかと思った。その瞬間、目の前を何かが通り抜けた。

「団長……」
「だから誰それ」

私が相手取っていた三人を、ものの一撃で全員地に伏せさせてしまったのだ。団長の技に圧倒されたのと団長の行動が読めないのとで私は戦場にも関わらず立ち尽くした。

「何で、ここに……」
「お前があんまりにも見てられないから来た」

尚もわからないという顔を続ける私に、団長は振り返って「故郷なんだろ?」と言った。

「何でそれを……」
「久々の故郷でテンション上がってるのかもしれないけど、過信はよくないってこの間俺教えたつもりだったんだけどな」

団長はそう続けながらも目の前の三人を殴り続けた。手強いと思っていた三人も団長の手にかかれば幼子のようだ。すっかり立てなくなった三人を前にして、団長は一区切りついたのか私の方へ歩み寄った。

「やりなよ」
「え?」
「お前の昔なんか興味ない。だけど復讐なら自分の手でやった方がいい」

見ててあげるから。そう言って隣に並んだ団長は、一体私のことをどこまで知っているのだろう。私は震える足で三人に近付いた。