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 同じ関西ということもあり、大学生活は順調だった。オリエンテーションも終わり、何人か友達もできた。概ね高校生の私が描いていた理想の大学生活と言っていいだろう。毎晩、宮侑に出会うこと以外は。

「……プロバレー選手ってそんなに暇なん? 毎晩夜遊びとは楽な仕事やな」
「遊び歩いてんはそっちやろ。どうせ俺と治にフラれたヤケクソでヤリサーでも入ったんか? 毎日たらい回しやな」
「ヤリサーなんか入ってへんし!」

 卒業式でしか関わりのなかった宮侑に何がわかるというのだろう。新入生歓迎会で少しは帰りが遅くなっているとはいえ、私の帰りが遅い理由はそんな不純なものではない。それらしきサークルに誘われて少し、戸惑ったりはしたけれど。

「部屋に男連れ込んで毎日うるさいのだけは勘弁してくれや」
「毎日女替えてそうな奴がよう言うわ!」

 私達は近所迷惑になるほどの音量で叫ぶと部屋に入った。両隣で激しい開閉音のする二〇四号室の住人が不憫でならない。彼こそ宮侑が女を連れ込んでセックスする音で悩んでいるのではないだろうか。つくづく隣ではなくてよかったと思う。今晩のおかずは自炊で出来栄えもよかったが、私は決して宮侑におすそ分けしてやろうなんて気にはならなかった。神戸の地で調理に奮闘しているであろう宮侑の片割れ・治君を思う。もし同じアパートに住んでいるのが治君だったら喜んで手料理を持って行くし、私も治君のおすそ分けを頂けたかもしれないのに。宮侑のことはよく知らないが、見るからに自炊などするタイプではないだろう。アスリートとはいえ、自堕落な食生活に違いない。

 私は治君が見てくれることを祈って手料理をSNSにあげた。引っ越しの時綺麗な食器とテーブルクロスを買ってよかった。胸を高鳴らせながらストーリーズの既読アカウントを見ると、残念なことに治君はいなかった。それどころか宮侑がいた。私は宮侑をブロックしそうになる衝動を抑える。フォローもしていないというのに、わざわざ覗きにきたのだろうか。私も宮侑のストーリーズを覗くと、バレーの練習着と思われる服を着て格好つけた表情で鏡越しに自撮りをしていた。私は悪態を一つついて宮侑のストーリーズを閉じる。私がストーリーズを見たことは宮侑にバレてしまうだろうが、別にどうでもいい。作ったビーフシチューを片付けると、私は風呂に入ってベッドに潜り込んだ。