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 タイキに聞いたところ、タイキはミホとデートがしたいらしい。昨晩長電話をして事情聴取した結果を侑に告げると、侑はあからさまに嫌そうな顔をした。大方、自分のいないところで話を進められたのが嫌だったのだろう。スポーツ優良児の侑が寝ている間にタイキと話ができるのは私しかいない。私は一晩でまとめた結論を出した。

「いつもみたいに、四人で出かければええと思うねん。私と侑が付き合ってるんやから、自然とミホとタイキの二人になるやろ」

 なかなかにいい案だと思うのだが、侑はわざとらしくため息をついた。

「ミホはもう俺らが付き合ってんの知っとんやで? 四人で誘ったらタイキと二人になるのわかりきっとるやろ。カップルが一組おるだけで気遣って疲れるし」
「じゃあどうすればええねん」

 悔しいが侑の言うことは正論だ。四人で誘ってミホが来たら、それこそミホがタイキに気があるみたいになってしまうだろう。そうなれば万々歳なのだが、ミホの性格を考えると断る可能性の方が高い。私が尋ねると、侑は得意げな表情を浮かべた。

「ミホは俺らに興味津々や。俺らが近場でデートする言うたら尾行したがる。そこにタイキを遭遇させて、二人で尾行させればデートの完成や」

 私は驚きを隠せずに目を見開いた。漫画でよく見るデートの尾行。尾行も男女二人でやれば、立派なデートになる。その手があったかと感心するものの、ふと引っ掛かりを感じた。

「いくらミホが首突っ込みたがりって言うても、人のデートにわざわざ来るやろか」

 デートを尾行するというのはあくまで漫画でよく見るシチュエーションだ。実際に、友達同士のデートを尾行する人は少ない。偶然鉢合わせても、素知らぬふりをするのが現代人ではないだろうか。

「思わず尾行したくなるような怪しいデートにすればええ。そこでお前の行き遅れ設定や」
「はあ?」

 不審な声を上げた私に対し、侑は意地悪な表情で人差し指を立てた。

「俺らがラブホに行くってことをミホの前で言う。お前が処女やっちゅうことはミホも知っとるやろうから、気になるはずや」

 私はやられたような、恥ずかしいような気持ちで侑を睨んだ。ここに来て私の処女を利用されたのだ。親友のミホは勿論私が処女であることを知っているので、遊び人の侑にホテルに誘われたとなれば嫌でも気になるだろう。完璧だ。完璧な計画のはずなのに、猛烈に悔しい。

「ていうか、その計画やと私達がラブホ行かなあかんやん!」
「別に行ってもええやろ。中でなんかするわけちゃうし」

 その言葉に私だけ意識しているように思わされて、恥ずかしくなった私は下を向いた。それを了承と取ったらしい侑の声が聞こえる。

「計画実行や」

 今週の土曜、侑の部活が終わった後に、私は人生初のラブホテルに行く。