▼ 6 ▼

 土曜日になると、私はわざとらしく校門前で侑を待った。既にラブホテルに行くという話はミホの前でしており、ミホがこちらを振り返ったのも確認済みだ。ミホの部活も午前で終わるらしいので今日は学校に来ている。タイキは学校辺りをうろついてミホと合流させる手筈だ。私達はミホが後ろにいるのを確かめてから、二人連れ添って歩き出した。

「お前から手握るとかやるやん」
「しゃあないやろ。ラブラブな雰囲気出さなあかん」
「ラブラブっちゅうんはこうやるんやで」

 侑に距離を詰められ、私は柄にもなくときめく。相手は侑で、今は作戦の最中だからこうしているのだ。私は正気に戻ると、先程からこちらを窺っている高身長の集団を見た。

「ていうかバレー部なんとかしてほしいんやけど。勝手に写真撮るのやめてくれへん?」
「あー、あれはしゃあない。俺の彼女にしては地味やって盛り上がってんのや」
「誰が地味や!」

 侑は部活仲間に対しても嘘をついてくれているらしい。クラスで嘘はついても、仲の良い部活仲間には本当のことを話すと思っていたので少し意外だ。侑は部活仲間に、私と付き合っていると思われてもいいのだろうか。

「そんじゃ駅前に出たら右や。そっちにラブホが何軒かある」

 私は無言で侑の顔を見る。わかっていたことだが、侑は慣れている。きっとこれから行くホテルも侑の御用達なのだろう。一体何人の女を連れ込んだのだろうか。

「ちょっと高いけど新しいホテルか、安いホテルどっちがええ?」
「どっちでもええ」

 言い方が刺々しくなってしまったのは仕方ない。侑も私の変化を見逃さなかったようで、「嫉妬しとんのか? カノジョサン」とからかってみせた。

「ミホとタイキも入りやすいように安いホテルや! そっちでええ!」
「了解」

 侑は私の腕を引っ張り、駅構内ではなくホテルがある方へと連れて行った。振り返ってミホとタイキが二人で私達を尾行しているか確かめる余裕はなかった。ミホとタイキをデートさせるためにやっているというのに、これでは私達がデートしているみたいだと思った。

「行くで」

 処女らしいところなど見せたくない。入口でぐずるわけにもいかず、私は侑とホテルに入った。侑は慣れた調子で部屋を選択し、代金を払う。お金は後で私も出すが、きちんとリードするあたりが男らしいと思った。気付けばミホとタイキのことを考えることも忘れている。私は今、侑とラブホテルにいるという事実を受け入れるのでいっぱいいっぱいだった。