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 凪くんは、私を外へ連れて行きたがった。それはインドアな凪くんなりの努力ではないかと思っている。つまり、私に何か施しをする気があると。私は少し離れた凪くんをじっと見た。今日は家にいるが、外に出た時のように近付いたり隣に並ぶことはない。ある程度の距離を意識して保っているようだった。外なら近付いてくれるのに、と私は思う。性的なことはしないという、凪くんからのメッセージのようだった。

 私は凪くんの隣まで行き、腰を下ろす。ゲームをしていた凪くんは一度私を見たが、すぐにまた視線を戻した。私は凪くんがゲームをしていることに構わず、口を開く。

「私達って家政婦と雇い主?」

 私の声が静かな部屋に響く。凪くんは何かと奢ってくれるから、まあ雇用関係というのもあながち間違いではない。

「違う。家政婦とは思ってない」

 凪くんの声は、やや感情がこもっているように思えた。私は覚悟を決めて、一線を越える。

「じゃあ、セフレ?」

 凪くんは今度こそゲームから顔を上げた。敗退したのだろう、ゲームからは間抜けな音が響いている。

「セックスしたことないじゃん」
「してくれないんじゃん」

 畳みかけるように、私は言葉を返す。凪くんは少し言葉に詰まったようだった。私に恋人らしいことをしてくれるのにセックスはしてくれない理由、考えられることは多くない。

「……あんまりすぐに手出したくないだけ。わかってよ」

 凪くんは私の腰に手を伸ばした。まるで恋人にするような仕草だった。もしかしたら凪くんの中で、私達は付き合っているということになっているのかもしれなかった。告白なんて面倒くさい、など凪くんの言いそうなことだ。だったら、セックスだってできるはずだ。

「私はしたいよ」

 誤解されることを覚悟の上で私は凪くんを覗き込んだ。凪くんは私の隣でじっと見ていたが、やがて唇を合わせた。そこから床にもつれこむまでは、長くなかった。