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 凪くんの隣で寝そべっているところで、私はとある失敗に気付いた。凪くんは避妊をしたのだ。これでは玲王くんの計画通りではない。しかし、凪くんとそういう仲になれるならもう何だっていいや、と思った。スマートフォンで玲王くんとのトーク画面を開く。無事にベッドインしました、と送ろうと思ったがやめた。スマートフォンを枕元に置いて二度寝する。凪くんはまだ寝ている。これから付き合えても付き合えなくても、妊娠してもしなくても、凪くんが望むならそれでいい、と思った。

 次に目が覚めた時、凪くんの挙動はおかしかった。寝てしまったから変わったのだろうか、と思うが、凪くんの視線は照れや恥じらいではない。むしろ、懐疑するような。私は凪くんの手に私のスマートフォンが握られていることに気付いた。玲王くんとのトーク画面を開きっぱなしにしていたはずだ。私はそれで全てを理解した。凪くんも私の様子で私に気付かれたことに気付いたのだろう。スマートフォンをわざとらしく振った。

「ねえ、あんた玲王に踊らされてるんだよ。何で妊娠なんかできるの」

 先程の行為では避妊していた。妊娠という言葉を出すのは、玲王くんとのメッセージを見た証拠だろう。私は何故責められているのかという気持ちになった。逆ギレと言われるならばそれでいい。そもそもこの計画を考えたのは玲王くんで、私はそれに従っていただけだ。身を滅ぼしてもいくらい人を好きでいることが、そんなに悪いことなのか。

「好きだから、以外に理由ある?」

 私は凪くんを睨みつけた。凪くんはあっけに取られたように口を開けていたが、やがて笑い出した。

「苗字さんくらい貪欲な人、初めて見たかも」

 その言葉で私は凪くんに許されたのか。凪くんの意思はまだわからないが、今隣にいることは事実である。明日から会えないとしても、私は今を楽しもう。私は凪くんの横で布団に沈んだ。