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状況を整理したい。いつの間にか季節は春になっていて、東北地方の辺境の山から高専に移動していたらしい。どちらも木々が多いのでわからなかったが、今見ている景色は明らかに高専のそれだ。そして、目の前にはまだ目の下にクマのない夏油がいる。私は神社でしたお願いを思い出した。私は、高専の入学式までタイムスリップしたのかもしれない。
「私って何歳?」
そうなれば、私は高校一年生、まだ十六歳にもなっていないはずだ。体に大きな特徴があるわけでもなく、私は思わず声に出して尋ねる。すると夏油は眉を下げて笑った。
「何歳に見えるかを気にするような年齢には見えないけど」
私は相手に何歳に見えるかを尋ねる面倒な女性のように見えていたのだろう。安心してほしい。私は三十路になろうとそれをするつもりはない。
「この先だろう? 一緒に行こうよ」
夏油は私と一緒に高専の道を歩いた。私は慣れ親しんだ高専の廊下を、今日初めて歩きますという顔をして戸惑って歩いてみせた。辿り着いた教室に、堂々と股を開いて座る男が一人。
「オマエらが同級生?」
「そう、よろしく」
夏油がその隣に座り、私は反対側に座った。私の隣にはショートカットの少女がいる。白髪の大男、それからショートカットの少女。私がよく知っている、大切な同期だ。
「席に着け」
夜蛾先生が入ってきて、私は二回目となるオリエンテーションを受けた。言葉を聞き流しながら、私は本当にタイムスリップしてしまったのだと思った。ふと五条越しに夏油を見る。夏油はまだ、何の曇りもない表情をしている。これから彼が、本当に親や罪のない一般人を殺して悪へ染まるのだろうか。それをさせないために私がいるのだ。私は気合を入れ、椅子に座り直した。どうして私がタイムリープで来たのかはわからない。だけどこれにはきっと意味があるはずだ。今回こそは、全員で笑って卒業する。夏油を呪詛師になんかさせないし、五条や硝子、夜蛾先生も悲しませたりしない。
夜蛾先生の話が終わると、五条や硝子は寮の部屋へ退散した。夏油もその後を追おうとするので、慌てて引き留める。
「夏油……くん」
慣れないくん付けをすると、夏油は相変わらずの落ち着きを持って言った。
「呼び捨てで構わないよ」
私はそれに答えることなく、前のめりになって迫る。
「何か悩んでることとかない?」
夏油は突然のことに笑った。知り合ってすぐに悩みを聞くなんて変だと、後から私も理解して赤くなる。
「入学初日に珍しいコミュニケーションだね」
優しい笑みを浮かべていた夏油だったが、からかうように目を細めた。
「悩みはクラスメイトから突然距離を詰められてることかな」
「じゃあ離れる!」
私は咄嗟に距離をとる。何が夏油を離反させたのかわからない。私はこれから四年間、夏油にストレスを溜めさせないようにしなければいけないのだ。
夏油は少し驚いたような顔をした後、片手を差し出した。
「いいや、今のは冗談だ。君が私に興味を持ってくれているなら嬉しいよ。よろしく」
「……よろしく」
私は夏油と握手をした。久々に触れる夏油の手は、温かかった。