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一年生四人での初任務になった。ろくに挨拶をする間もなく車に詰め込まれ、私は後部座席でぽつりと呟く。
「私がすることってあるのかな」
「どうしてだい?」
隣に座っていた夏油がこちらを向いた。今、私の右隣に夏油が、左隣に硝子が座っており、助手席には五条が座っている。
「五条も夏油も強いから」
元いた世界では当たり前のことだ。最強の二人。入学時はまだ力が完成していないかもしれないけれど、それでも私より強いことに変わりはない。夏油は不思議そうな表情を浮かべた。
「私は君に力を見せたことがあったかな」
その言葉で、まだ私達は力を見せ合っていないことに気付く。五条は昔から有名だが、今の私は一般人の夏油の術式を知らないはずだ。
「なんとなく! 喧嘩強そうだし!」
無理のある誤魔化しだったかと思ったが、「強そう」という言葉はこの年代の男子にとって大きくプラスに働いたらしい。
「強そうと思われるのは嬉しいよ。あの五条悟に並べられることもね」
夏油はそう言って頬杖をついた。それから言葉に違わない程度の活躍をした。夏油と五条でほとんどやってしまって、心配した通り私はいらなかった。
任務が終わった、と背伸びをしている五条の少し離れたところで何かを飲み込もうとしている夏油に気付く。そういえば、夏油の術式は呪霊を飲み込む必要があったはずだ。それは余程まずいのか、苦しみに耐えるような表情をしている。
「すごくまずいんだ、これ」
私に気付いて夏油は眉を下げた。もしかしたら呪霊を飲み込むのが辛くなって夏油は呪術師をやめたのかもしれない。でも、夏油に強くなることをやめろなど言えない。
「自分の術式使うのって辛い?」
私が言うと、夏油は優しい表情を浮かべた。
「飲み込むのはね。でもそれで誰かを守れるなら悪くない」
それから、私をからかうように口角を上げてみせた。
「たとえば今日、呪霊に襲われそうになってた誰かとかね」
優しい常識人に見えて中身は五条と同じ悪ガキ。これは紛れもなく夏油傑だ。
私は前の時代と同じく、二人についていけるように、あるいはからかわれないように努力した。夏油も夏油で強くなることをやめなかった。呪霊を飲み込む瞬間の表情はやはり心配になるけれど、今の所夏油が離反するような兆候はなかった。だとしたら一体、何が原因だったのだろう。