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 夏油と五条の二人に星漿体の護衛の任務が入った。初め私はまたたいそれたことをするものだと思ったが、任務直前になって二人が失敗することを思い出した。最強と呼ばれた二人の、絶世期であってもだ。

 私は寮の夏油の部屋を訪ねた。一人で男子寮に入った私に夏油は驚いたようだが、夏油が何か言うより先に私は切り出した。

「星漿体の任務には行かないで」

 身勝手なお願いだと思う。代わりに私が星漿体を守れるわけではない。この任務の結末を今この場で言えるわけでもない。そんな私の話を、夏油はきちんと聞いてくれた。

「それは私を心配して言ってくれるの?」

 心配と言えばそうなのだろう。私は夏油が離反することを心配している。けれど夏油の言っている「心配」は、任務で夏油が傷付くことなど世間一般的に仲間や恋人がするような心配だろう。それとは少し違う。黙り込む私に、夏油はまなじりを下げた。

「心配してくれるなら嬉しかったのに」

 頭の上に重みが載る。それが夏油の手だとわかって、私は視線を上げた。

「大丈夫だよ、私達は最強だから」

 そう言う夏油はまだ、自分や未来というものを信じているように思えた。


 私がタイムスリップしたからと言って、星漿体の任務に私が関わったわけではない。任務は前の時代と同じように失敗した。夏油はやつれた顔をして、私を見て自嘲的に微笑んだ。

「君の言っていた通りだったね。私達は任務に失敗した」

 だから言っただろう、なんて言える度胸は私になかった。あの時無理をしてでも夏油を行かせなければよかったのか。五条だけに行かせて失敗となったら、夏油は自分を責めるだろう。止めた私ではなく、自分自身を。

「でも、行かなければもっとたくさんの人が死んでたかもしれないでしょ」

 夏油はたくさんの人の命を守ったはずだ。夏油を励ましたくて言うと、夏油の目から光が消えた。

「たくさんの人って、その人達全員に守る価値があるのかな」

 離反する前の夏油の姿と重なった気がして、私の視線は夏油に吸い寄せられる。それをどう思ったのか、夏油はすぐに表情を元に戻した。

「すまない、疲れているみたいだ」

 私は夏油を抱きしめたい思いでいっぱいになった。夏油を離反から助けたいのではなく、今この瞬間の夏油を楽にしてやりたくてたまらなくなったのだ。私が抱きしめたところで何も変わらないかもしれない。でも。

「今だけこうさせて」

 夏油を抱きしめると、夏油の体温を感じられた。夏油は血の通った人間なのだ。

「私も今だけこうしていいかな」

 夏油も私に腕を回した。私達は暫くの間そうしていた。