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 夏油や五条ばかりに任せていられない。夏油の負担を軽くするためにも、私だって任務をこなすのだ。

「じゃあ行ってくる」
「行ってらー」
「おー」

 二人の間延びした返事を聞きながら、ふと足を止める。普段なら聞こえる、夏油の優しい声が聞こえないのだ。夏油は私の任務の時、いつも「気をつけて行くんだよ」と言ってくれた。振り向けば、すぐ近くに夏油がいた。

「君が行く必要があるかな」
「え?」

 夏油がそばにいたことにも、その沈鬱な表情にも驚いてしまう。さらにはこの発言だ。以前の時代の夏油は私が強くなろうとすることを応援してくれた。夏油らしくない。夏油は俯きながら言葉を続けた。

「最近呪術師の被害が多いだろう。人手不足だと言っても、流石に酷使しすぎだ」
「大丈夫、私だって呪術師だから」

 夏油に心配をかけていられない。無事に帰ってきて、夏油にまたいつもの表情へ戻ってもらうのだ。

 しかし、そう上手くはいかなかった。一般人の数が多く、呪霊から守るのにどうしても力が及ばなかった。結果として私は怪我をした。傷跡が少し残る程度で、後は硝子に頼るまでもない小さな怪我だ。それでも夏油にとっては大きなことらしかった。

「やっぱり言っただろう!」

 額に手を当てて叫ぶ夏油に、私は何と声をかけていいかわからなくなる。

「取り乱すなんてらしくないよ」
「どうして呪術師ばかりが……」

 夏油は、私が傷付いたことではなく呪術師が傷付いたことを気にしているのかもしれない。呪術師は一般人より強いのだから、危険な立場にいて当たり前だ。夏油もそのことをわかっているのではなかったか。

「一般人を守るのが役目なんだから仕方ないじゃん」

 私の声に、遅れて医務室に入ってきた五条が賛同する。

「何動揺してんだよ傑。大した怪我じゃないし、俺が行けなかったんだから仕方ないだろ」

 最近、五条は日本各地の任務を担当していた。五条と一緒だったなら大丈夫だったはずだ、というのはこの場にいる人間の共通見解だ。

「そうだね……仕方ないことなんだ」

 この時、私は気付いていなかったのだ。呪術師ばかりが割りを食うことも、五条がいればすべて解決できてしまうことも夏油を追いつめている要因の一つだったなんて。

 私は夏油に心配をかけまいと空元気で振る舞った。五条もそれに合わせて私達だけが明るくいた。そのせいで、夏油の悲痛さがより際立つかのようだった。