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 南雲はそれから屋敷に泊まり込んで少女の面倒を見るようになった。三度の食事を用意してやればいいようで、後は何か困った時に呼ばれるくらいだ。流石に身を清めることや排泄は自分で行う。南雲は別にやってもよかったけれど、年頃の少女としては嫌なのだろう。南雲と少女は、ただの殺し屋と標的でしかないのだけど。

 南雲は少女のベッドのそばに椅子を置き、ぼうっと外を眺めた。

「一日中ここにいて、暇ではないのですか?」

 思い出したように少女が問う。南雲は視線を少女に移した。

「その言葉そっくり返すよ」
「私は暇ではありません。もう慣れましたから」

 その言葉には寂しさがうかがえるが、南雲はあえて突っ込まない。

「一人だったら数独とかするんだけどね」

 家ではそうやって過ごしている。今回は数か月屋敷に滞在することになるので、長期休暇を貰ったようなものだ。過労に近い状態だった身としては必要な任務だったのかもしれない。この任務を選んだのも、運命なのだろうか。

「やっていていいですよ?」
「いや、一応君がいるからさ」

 一人で数独に熱中しているのも悪い。かといって、仲良く遊ぶような仲ではない。少女は考え込むように俯いた。

「私達はお友達なのでしょうか」
「じゃあ、なる?」

 南雲は体を少女の方に向ける。友達など随分懐かしい響きだ。依頼人、標的、同僚。南雲の人間関係はそれらで構成されている。

「友達は何をするのでしょう」

 友達に縁がないのは少女も同じなのか、考え込むような顔をした。南雲も顎に手を当ててみる。

「セックス?」
「それは別の友達です」

 少女は眉間に皺を寄せた。

「ごめんごめん、僕あんまり普通じゃないからさ」

 暗殺一家に生まれたこと。ORDERに所属していること。気を緩めたら少女にすべて喋ってしまいそうだ。南雲とは正反対の、田舎の弱々しい女性だという認識がそうさせるのだろうか。

「私も昔から病気がちであまり普通ではありません」
「じゃあ僕達は気が合うよ」

 こうして少女と南雲は友達になった。友達になって初めてしたことは、数キロ離れた駅まで数独の雑誌を買いに行くことだった。

「数独というものを教えてください」

 そう言う彼女のために。