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南雲がいつものように少女の部屋へ行くと、少女は布団に潜っていた。いなくなったわけではないよな、と五感を研ぎ澄ませる。少女の吐息が確かに聞こえたことに安堵した。
「どうかしたの?」
南雲が尋ねると、少女は頭の先だけを布団から出す。
「今日は具合が悪くて、南雲さんに顔を見られたくありません」
具合が悪いのはいつものことではないのかと思うが、今日はいつにも増してということなのだろう。南雲相手に緊張することもあるまいに。変に友達になってしまったから、見られたくないと気を張ってしまったのだろうか。なら親しくしない方がよかったか。南雲は考えるが、こんな辺鄙な所で誰とも喋らずに数か月過ごしたらその後復帰できなくなりそうだ。
「じゃあ見ないけど、死なれたら困るから世話は焼くよ」
南雲は布団をめくり上げた。顔は隠しているが、汗で濡れた体は隠せていない。
南雲は濡れタオルを用意し、少女の体を拭いてやった。生憎人体の構造には詳しい。少女の体を見ても、ここが急所だとかくらいしか思わない。
最後に着替えをさせてやり、南雲はベッドから手を引いた。やはり殺すより生かす方が疲れる。
「ありがとうございます……すみません、お見苦しいものを」
少女は恥ずかしそうに言う。体は見られてもいいのに顔は見られたくないなど、変わった主義だ。
「見慣れてるから大丈夫」
言ってから、遊び人のようだったかと思った。事実ではあるのだが、田舎の少女には刺激が強かったか。
一息ついてから、南雲はふと思う。誰が来ても、殺しの期日まで少女を生かさなければいけなかっただろう。屋敷には誰もいない。
「もしかして介護させるために殺し依頼出したの?」
本当は殺させる気がないのではないか。南雲の瞳が光った。だとしたら契約違反だ。お金を得られたらいいというわけではない。最後は、きっちり少女を殺すのだ。そうしなければいけない。
何故、強迫観念のように思っているのだろう。
「そうではありません」
細く、小さな声だった。
「ただ、楽になりたいのです」
少女の病状は重篤だ。南雲は殺すのが仕事のはずなのに、何故生きてくれないのだろうと思った。死にたがっている相手を殺すほどつまらないことはない。