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数日間少女の病状はよくなかったが、南雲の献身的な介護が功を奏したのか少女は回復した。と言っても元の状態に戻っただけで、少女が病気であることも死を望んでいることも変わらない。
「この間はありがとうございました。楽になりました」
少女は笑顔を見せた。久しぶりに見る少女の顔は晴れやかとまで行かないが、少しは楽であるように見えた。
「このまま死んじゃう?」
南雲は冗談のように携帯している武器を取り出す。南雲の重厚な武器にももう慣れたのか、少女は声を出して笑った。
「それもいいですね」
元気になって、よかった。南雲は無意識の内に少女の死を恐れているのだと気付いた。自分が殺さないといけないから。それ以外に、少女に傾倒しているとでも言うのだろうか。南雲と少女は殺し屋と依頼人、それだけのはずなのに。
「ねえ、本当に死ぬの」
南雲の顔から光が消える。急に部屋の温度が数度下がったような気がした。南雲に気圧されることもなく、少女は眉を下げる。
「はい。苦しいのは嫌ですし、どうせ悲しむ人はいませんから」
自虐的な冗談だったのだろう。しかし南雲は畳みかける。
「僕は?」
「え?」
「僕が悲しむとは思わない?」
それも冗談なのか、本気なのか判断しかねる。南雲が悲しむとして、少女が死ぬのをやめたら南雲は喜ぶのだろうか。南雲は殺しの任務に失敗したことになる。そのまま二人で殺連から逃げながら田舎で暮らす、なんて夢を見ているのだろうか。あの、南雲が。
張り詰めた空気を少女が破った。
「南雲さんはプロですから、そんなことを思わないでしょう」
「あはは、そうだね」
南雲は少女を殺す。殺し屋なのだから、何の感情も抱かずに。そういう割り切りは上手いはずだ。気付いたら、南雲は自分に言い聞かせていた。