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 ある日南雲が少女の部屋に入ると、少女はカメラに向かって語りかけていた。外に出ることはできないだろうから、通販で買ったのか。こんな田舎にも配送してくれるものなのだと感心しながら南雲は少女に近付く。少女は南雲を画角に入れた。

「私が死ぬまであと一週間です。殺し屋の南雲さんです」
「いえーい、南雲です」

 南雲はカメラに向かって笑ってみせる。少女は今日の体調や天気を話した。まるで配信者だ。少女がカメラのスイッチをオフにしてから、南雲は話す。

「これ、誰が見るの?」
「わかりません。私が生きていた証を残したいだけなので」

 その表情は寂しいというよりも、ときめきや期待に満ちている。死ぬ前に標的に縋られることはあっても、このような表情を見せられたことはない。つくづく変わった少女だ。南雲が言えることでもないかもしれないが。

「随分死ぬのが楽しみみたいだね」
「おかしいですか?」

 こちらに少女の顔が向いたことにどきりとする。死ぬことに確固たる意志を持った少女は、特に何の考えもなく殺しをやっている南雲よりもずっと美しい気がした。

「ううん。いつも命乞いする相手ばっかり見てるから珍しいだけかも」

 少女はカメラを置いて手を合わせる。まるでパーティーについて語るように。

「じゃあまた明日、今度はケーキを食べましょう」
「ケーキなんて食べられるの? 流動食ばっかり食べてるのに?」
「そこは南雲さんがぐちゃぐちゃにしてくださいよ」
「そうしたら僕は悪党じゃない?」
「元から悪党でしょう。殺し屋なんだから」

 少女と南雲は声を合わせて笑った。久しぶりに心から笑った気がした。田舎の景色と無垢な少女というのは、存外心を洗ってくれるらしい。南雲は気付いたら少女に心を開きかけていた。心を開こうが、仕事となれば無心で殺せるのがプロだ。だから問題ないと思っていた。少女は南雲に殺されて終わるのだ。この日々は、一時の美しい思い出としてしまわれる。そう思っていた。