▼ 2 ▼

「そらそうやろな。俺は信じんわ」
「アンタのせいやろが」

家に帰ると既にソファに座った宮侑がいた。私の家は諸事情あり一人暮らしのアパートだ。全国規模の部活をやりながら家事も行うというのは大変だが、逆に家事がマネージャー業に役立ったりもする。今回宮侑を受け入れられたのも私が一人暮らしであるおかげだろう。もし親と同居などしていようものなら、未来から来た同級生を住まわせてほしいなどとても言えたものではない。

「飯出来とるけど食うか?」
「え、作ったん? ていうか料理できるん? するん?」

あまりにも自然に発せられた一言に私は大きく目を見開いた。あのコンビニで買い食いをしてばかりの侑が料理を? すると考えていることがバレたのか、頭に宮侑の手刀が落ちる。

「こちとら社会人様やで。するわ」

宮侑が見せたフライパンには美味しそうな鶏の照り焼きがちょうど二人分載せられていた。正直予想以上だ。

「ちゃんと美味そうやん」
「当たり前やわアホ」

私達は二人で向き合い、手を合わせて宮侑の作ったご飯を食べた。見かけだけではなく味もきちんと美味しい。誰かとこうして家でご飯を食べるのは久しぶりだ。なんだか不思議な気分に陥りながら、私は口を動かす。

「でもこのままだと私がただの頭おかしい奴やん? どうしたら信じてもらえるんやろか」

ちょうど宮侑の作ったチキンを頬張りながらそう言うと、宮侑は考え込むように上を向いた。

「んーじゃあ俺に、小さい頃隣の家のチャロって犬に手噛まれたやろ言うてみ。それはサムも知らんから信じるはずや」
「わかったわ、チャロな。そんで泣いたねんな」
「泣いたとは言ってないやろが」
「でも泣いたんやろ?」

まるで普段の侑をからかうように笑ってみせると、宮侑はふと黙り込んだ。

「あんまり大人をからかっちゃあかんよ、名前」

その声色に昨晩あった出来事を思い出し、私は思考停止する。そうだ、今私が相対しているのは高校生の侑ではない、未来から来た宮侑なのだ。箸を止めた私に、「冗談や冗談、あんまり固くならんといてや」と宮侑は笑った。それにどこか安心して私はぎこちなく箸を進める。テーブルを挟んだ向こうで、宮侑の瞳が妖しく光った気がした。


「ほんじゃ名前は先寝ててええで。明日もあるんやろ? 部活」
「あるけど……というか普通に風呂とソファ借りる気満々やな」
「そりゃ住まさしてもろてるからな。襲う気はないから安心して寝ろや」
「当たり前やアホ!」

振り返ってそう叫ぶと予想以上に近い位置に宮侑の顔があった。思わず動きを止める私に構わず、宮侑はさらに顔を近づける。

「おやすみ」

耳元でそう言うと、宮侑は適当なタオルを出し風呂場へ向かって行った。