▼ 番外編1 ▼


「いやいやいやちょっと待てや……好きやってどういうことやねん。セフレやなかったん、俺ら」

名前に告白されたという喜びも過ぎ去り、今は冷静に現状を分析していた。今まで二人はセックスフレンドの関係になっていて、侑は二股野郎だと思われていて、それでも名前に片思いをしていたのではなかったか。

「だから普通に好きだったってだけやん。私は前から侑のこと好きやったよ」
「いや俺の方が前からお前のこと好きやわ! 高校時代からやぞ! そこは譲れん!」

何が楽しいのか、クスクスと笑いながら告げる名前に侑はすかさず主張した。名前が高校時代侑のことを何とも思っていなかったのは身をもって知っている。侑の方が長く片思いをしているのは確実だ。

「高校時代は気付かんかったけど、侑が私のこと好きなんは知ってたよ。だって初めてセックスした時、ずっと私の名前呼んで好きやって言ってたんやもん」
「おぉ……」

自分の記憶にない恥ずかしい過去に侑は居たたまれなくなる。いくら酔っていたとはいえ、それでは侑の気持ちが丸わかりだ。現に侑は、一方的に自分の気持ちを知られた状態で名前の掌で転がされていたことになる。

「お前いつの間にそんな悪魔みたいな女になったんや! 高校時代はもっと天使みたいな感じだったやろ!」

なかなかに恥ずかしいことを言ってしまった気がするが、一人転がされていた侑の本心である。すると名前は侑を見上げて、「今の私は嫌い?」と聞くのだった。

「……んなわかりきったこと聞くなや」

侑はどこか違う方角を見ながら、居心地の悪そうに答える。そんな侑を見て、名前はクスリと笑った。

「今日は泊まっていく?」
「……折角だから泊まってくわ」

今日は健全なデートを楽しむ予定だったが、気持ちが通じ合った記念としてセックスをしてもいいかもしれない。最初は乱雑に抱いてしまった分、労わるような優しいセックスがしたい。いつもはすぐに服を着て布団から出てしまう名前も、今日ばかりは侑の腕の中で布団に入っていてくれるだろう。その時、純粋に名前に恋をしていた高校生の侑は報われるはずだ。順番こそ間違えてしまったものの、今侑はあの頃思い描いていた理想の未来にいる。これからの未来がどうなるかは、侑次第だ。