03. 親友と
「名前ちゃんは阿部くんの事が好きなんでしょ」
千代ちゃんに突如そう言われ、口に入れようとしていた卵焼きを落としてしまった。
「な、何で、」
「名前ちゃんの様子見ていればすぐ分かるよ」
「…そんなに分かりやすい?」
「うん、」
名前ちゃん、阿部くんと話しているとき顔赤いもん。と、まさにぱあっと言う効果音が付きそうな笑顔で答える千代ちゃん。対する私の顔は真っ青に違いない。
「うそ、うそだ…!」
「うそじゃないよ」
「……皆知ってるの?」
動揺して震える手でお母さんお手製の弁当を食べながら彼女に聞く。彼女も弁当をつつきながら言った。
「花井くんとか水谷くんとかは知ってるね」
「うん、あの二人に言ったもん」
「そっかあ」
「阿部くんは…?」
「知らないと思うよ」
その言葉を聞いてほっと安心する。もし彼に気付かれていたら…、と思うと身震いする。そうなったら恥ずかしすぎてもう学校に来れないかもしれない。
ふと、顔を上げると千代ちゃんと目が合った。
「名前ちゃんなら大丈夫だよ。だってすっごく可愛いもん!」
「私、可愛くないよ、」
「そんな事言わないの。もう、名前ちゃんは弱気なんだから…、もっと積極的にいかないと」
そう言い、彼女は女の子らしく、ふんわりと笑った。私なんかより絶対千代ちゃんのほうが可愛いと思う。
私は最後に残っていたタコさんウインナーを口に入れ、先ほど落とした卵焼きを空になった弁当箱に入れて蓋を閉めた。床に落ちたら食べれないもんね。
「私、名前ちゃんの事応援するね!」
「…ありがとう」
「折角隣の席なんだからチャンス逃さないようにね」
じゃあ、と彼女も弁当箱を片付けて、立ち上がって自分の席に戻っていった。
授業の用意をしていると予鈴が鳴った。授業開始まであと5分。何だか眠くなってきて、ふわあ、と欠伸をする。次の授業は数学だ。
090612
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