06. 日直
「今日の授業はここまで。日直は宿題を集めて準備室まで持ってくるように」
起立、と号令係が威勢良く言い礼をする。先生は、また明日、とだけ言い残し教室を出ていった。自分が集めれば良いのに、と声に発する事なく心の中で愚痴を溢した。
名字は号令の後、すぐに前に出て宿題を集めます、と大声で言った。もうかなりの量が教卓の上に集まっていた。
日直の仕事には、黒板消しや日誌、窓や電気の管理などたくさんある。宿題を集める事など先生の雑用も立派な日直の仕事だが俺は気に食わない。
テスト前だから今日から部活が休みだった。これがなければ早く帰れたのに。イライラしながら今日の分の日誌を書いている内に、クラスメート達はとっくに掃除を終わらせ教室には俺と名字だけだった。名字は先程集めた宿題を出席番号順にし直している。
「俺の分書き終わったんだけど、」
教壇にいるあいつは顔を宿題の山から此方に向けると、にこりと笑った。
「じゃあ、先帰って良いよ。残りは私がやるから」
そう言うと、あいつは視線を宿題の山に戻し作業を再開した。
俺は先に帰るのは何だか申し訳なくて、名字に近づきこいつが持っていた誰かの宿題を取り上げた。こいつは少しばかり驚いたようで俺の事を見上げた。
「こっちは俺がやるから、お前は日誌書いてこいよ」
「え、」
「手伝ってやる」
俺も日直だから手伝う手伝わないの問題ではないが。そう思いながら俺は作業を始めた。
「日誌書き終わったよ」
丁度並び替え終わった時、名字はそう言ってきた。
俺は荷物をまとめ、宿題の山を抱えた。名字を見れば、こいつはぽかんとして俺を見ていた。
「早く出しに行くぞ」
「…あ、待って!」
俺の言葉にはっとし、こいつは急いで荷物をまとめ始めた。
「ごめんね、じゃあ行こっか」
「そんなに急がなくても良かったのに」
「大丈夫。待たせるの悪いし」
半分持つよ、とこいつは少し笑いながら手を出してきた。
その後、俺達は宿題と日誌を先生に出して昇降口まで戻ってくると、外はざあざあと雨が降っていた。天気予報では雨が降るなんて言ってなかった。
雨降ってる、と呟くとこいつは掃除終わった頃から降ってたよと教えてくれた。気付かなかった俺ってどんだけだよ、と心の中で突っ込む。
「傘ねえよ」
「私あるけど、入る?」
「…は、」
「このままだと阿部くん風邪ひいちゃうし」
どうする?と聞いてくる名字、折角のこいつからのお誘いだ、俺はじゃあ遠慮なくと答えた。頬が緩むのを必死に堪えて。
090625
← □ →