09. 君と僕の


「阿部くんと帰るの二回目だね」
「ああ、そうだな」

阿部くんに話しかけながら下駄箱で靴に履き替える。ここ数日で、普通に阿部くんと話ができるようになった。屋上で一緒に弁当を食べた日からだろうか、彼と話す機会が多くなったような気がする。

「あ、そういえば」
「ん、どうした」
「どうして阿部くんは帰り誘ってくれたの?」

ふと思ったことを訊ねると彼は固まってしまった。彼の顔は僅かに赤くなっているように感じる。あれ…?

「阿部くん…?」
「…あー、いや、」
「あの、言いたくなかったら別に良いんだけど…」

うーとかあーとか唸っている阿部くんを見てそう言った。私だって彼を困らせたくはないし、しつこい女だって思われたく、ない。帰ろ?と、彼を背にして歩き始めると彼に腕を掴まれた。くるりと後ろを見ると彼は真剣な目をしていた。

「聞きたいことがあんだけど、」
「ん、何?」
「…お前、花井が好きなの?」
「へ、いや別に」
「じゃあ、水谷は…」
「友達としてなら好きだけど…?」

いきなり何を言い出すのだろう。何も言えず黙っているとあのさ、と彼がまた口を開いた。

「俺、お前のこと好きなんだけど」
「……へ、ほんと?」
「まじ」

一瞬、彼の言った言葉が理解できなかった。彼は何が好きだって?彼は野球馬鹿じゃなかったのか。

「…私、阿部くんって恋愛とかに興味ないのかと思ってた」
「……へ、」

取りあえず思ったことを口に出した。彼は目を真ん丸にさせて口を開けている。その姿が何だか阿部くんらしくなくて、私は思わず笑ってしまった。

「な、何で笑うんだよっ!」
「ううん、何でもない」

彼に少し睨まれたけれど全然こわくない。首を横に振ってまた笑った。

「私も阿部くんのこと好きだよ」

そう言うと、彼は赤かった顔を更に赤くさせた。私の顔も赤いんだろうけれど気にしない。彼の手を握ると彼は握り返してくれた。私は今、幸せだ。


090704


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