20. オレンジ色の決意


オレンジ色に染まる道路の上を、名字さんと俺は歩いていく。
ドキドキ。隣の彼女をどうしても意識してしまう。心臓の音が彼女にまで聞こえていたら嫌だなとか、そんなのあるはずないと分かっているのに不安になる。

「名字さん…!」
「ん、どうしたの?」
「あ、いや、何でも、ない…」
「そう?」

さっきからこのやり取りの繰り返し。何やってんだ、と自分を叱咤する。
これじゃあ巣山たちに合わせる顔がない。悶々と悩み始めると、くすくすという笑い声が鼓膜を揺らした。

「今日の栄口くん、おかしいね」

くすくす。彼女は口元に手を当て面白そうに笑う。俺は顔に熱が集まっていくように感じた。

「そうだ!名字さんのお母さんってどうしてる?」

誤魔化すように話題を変えた。名字さんはそんなぎこちない俺を大して気にする様子もなく質問に答える。

「買い物に行ったり、家でのんびりしてたりしてるよ。でも土曜には帰るって言ってた」
「…名字さんのお母さんも大変そうだね」
「まあね…。あ、今度は電話くれるって」
「そっか、良かったな!」
「うん!」

こくりと頷く名字さんは本当に嬉しそうだった。


暫く歩いていると、彼女の家が段々見えてきた。今日も明かりがついている。けれども、土曜にはそれがなくなるのだと思うと少し寂しく感じた。
彼女の家の前で、不意に名字さんが俺の方に向き、口を開いた。

「もうすぐ大会始まるよね?私、見に行ってもいいかな?」
「え、いいけど、何で…?」
「栄口くんが楽しそうに野球の事話すから、私も見てみたくなったの」
「…あ、うん…」

彼女の言葉に何となく照れてしまう。俺の事をちゃんと意識してくれていたんだ。そう思うと嬉しくなった。

「初戦は休日にやるから名字さんも見に来れるよ」
「ほんと?良かった」

名字さんがふんわりと笑うのを見て、胸が高鳴る。彼女の事が本当に好きなんだと自覚した。それと同時に西広の言葉を思い出す。

後悔をするのは、自分。

もし、想いを伝えないままこの恋が終わってしまったら…?

(多分、告白しなかった事を後悔するんだろうな…)

ならば。いつか、彼女に告白したい。例え振られる事になっても、ありのままに俺の気持ちを彼女に伝えたい、彼女に知ってほしい。
そう、強く思った。

「じゃあ、またね」
「うん、また明日」

彼女は俺に手を振ってから、ドアの向こうに消えていった。


090825


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