22. 思い出たどり


今日は日直の日だった。
先生に頼まれた提出物を出しに職員室へ向かう。クラス全員分って結構重い。ついてないなあ。せっかくの昼休みを潰された事も合わさって何だか悲しくなる。いや、別に予定とかはないけれど友達と喋ったり仮眠とったりしたかったというか何というか。
…とにかくとっとと終わらせて教室に戻ろう。


「…あれ?」

職員室が見えてきたと思ったら、そこから出てきた名字さんの姿が見えた。無意識の内に声を発する。彼女のほうも俺に気づいたようだった。

「大変そうだね。半分持とっか?」

トコトコと小走りで近づいてくる。俺は大丈夫だと笑いかけた。彼女は納得していないようだったが、じゃあ付いてくんだったらいいよね、とだけ言って俺の後に続いた。
前にもこんな事があったなと自然と笑みがこぼれる。それは、そう、彼女と初めて言葉を交わした時。

「前にもあったよね、こんな事」

俺の心を読んだのか、偶然同じ事を考えていたのか、名字さんは少し楽しそうに言った。

「そうだね、確か、五月の終わり頃だったかな」
「そうそう。ゴミ捨てしてあげようって思ったのにさ、栄口くん私が持ってたゴミ袋奪うんだもん」
「だって俺がゴミ捨て担当だったし…」
「その科白、前も言ってた!」

二人で思い出しながら、くすくすと声に出して笑い合う。

提出物も無事先生に渡せ、二人で教室に戻る。その間も話を止めない。

「そっか、栄口くん日直なんだね。お疲れ様」
「んー、まだ仕事は残ってんだけど…、日誌とか」
「あ、日誌って思ったよりも大変だよね」
「うん、感想とか書くのって面倒くさいし…」
「手伝おうか?」
「えっ、いいよ、そんな!」

名字さんの申し出に、申し訳ないと首を思い切り横に振る。彼女はそれを見て、またくすくすと笑い出した。
そうこうしている間に教室までたどり着いていた。不意に、彼女が入り口の所で立ち止まる。

「…ずっとこのままだったら、」

ぽつりとこぼれた言葉。え…?、と思わず聞き返す。名字さんは首を傾げただけで。

「何でもないよ」

一瞬だけ、彼女の瞳が揺れた、気がした。
教室から彼女を呼ぶ声が聞こえ、彼女は教室の中へ入っていく。俺も彼女に続いた。

あの言葉に込められた意味は、何?


090825


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