27. いない、いないよ


名字さんが登校してきて時間があったらすぐに、なかったらHRが終わってから聞いてみよう。人にはあまり聞かれたくない話だから場所は廊下がいいかな。それとも階段…?
頭の中で流れをシュミレーションする。何だか緊張、してきた。

彼女は何て答えるんだろう。
好き?嫌い?
彼女を困らせてしまうのだろうか。泣かせてしまうのだろうか。色々な考えが頭に浮かぶ。けれども、どんなに考えたって分からない。彼女の思っている事は結局は彼女にしか分からないのだから。


「おい、今日は落ち着きがないな」
「え、そうかな…?」
「…何か、あったのか?」
「いや、別に…」

自分の席に座ってそわそわしている俺を見て、巣山は心配そうに尋ねてきた。大丈夫、何もないからと言う。それでも巣山は不思議そうに見てきたけれど、俺は構わず名字さんを待つ事にした。


時間は進んでいく。HRまであと五分になっても名字さんはやって来ない。
寝坊でもしたのかな。いつもならもうちょっと早く来ていたはずなんだけどなあ。

カチコチカチコチ。

あと一分。それでも彼女が教室に入ってくる事はなかった。体調とか悪いのかな。今日は欠席…?心配になる。本当、どうしたんだろう。

「栄口、」
「ん、何?」
「さっき名字の事聞いたんだけど、」
「えっ、名字さんに何かあったのっ!?」
「あ、まだ聞いてないのか?」

巣山の言葉にドキッとする。名字さんに何かあったんだ…。
名字は、と巣山が言いかけた時、ちょうどチャイムが鳴り教室に先生が入ってきた。巣山は申し訳なさそうな顔をして、また後でと言って自分の席に戻っていった。先生は出席確認をする。教室を見渡してから、出席簿に何か書き込むのが見えた。

「今日は皆来てるな」

悠然とした態度で先生は言った。えっ…?思考がフリーズする。情報の処理が追い付かない。
先生、今なんて言ったの。名字さんの席は空いているのに…?


090828


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