04. 意外な登場人物


長い授業も終わり、待ちに待った昼休み。
俺は半分だけ残った弁当を食べ始めた。隣で巣山は購買で買ったらしい菓子パンを食べている。
お互いに無言で口を動かしているだけ。

「そういえばさ、」
「ん、何?」
「栄口って名字と仲良いよな」
「へ?」

沈黙を破ったのは巣山だった。俺はただ首を傾げる。
名字さんと仲が良いって?

「別にそうでもないと思うけど、」
「いや、名字と話してるのって栄口くらいだろ?」
「え、そうなの?」
「ああ」

何か話かけにくい感じだしさ。巣山のその言葉に俺は苦笑した。
確かに雰囲気はそうかもしれないけれど、本当は周りの奴とたいして変わらない、普通の女子だ。ただ、感情の起伏は小さいかもしれないけれど。
そう思うと同時に、俺はまた優越感に浸った。


そんな会話から五分足らずで俺も巣山も食べ終わり、放課後の部活の為に俺たちは仮眠をとることにした。
巣山は自分の席に戻っていき机に顔を伏せた。俺も巣山にならい机に伏せようとしたが、ふと視界に入った姿に動きが止まる。そいつはドアの所でキョロキョロと何かを探しているようだった。

「田島、どうしたの?」
「栄口!」

席を立って田島のいる所まで行き、声をかけた。すると田島はぱあっと目を輝かせた。

「なあ、名前いない?」
「名前?」
「名字名前!」
「名字、さん…?名字さんならあそこにいるよ」
「サンキュー!」

窓際の席で本を読んでいる彼女を指差すと、田島は礼を言ってから駆け足でそこに向かう。
俺は自分の席に戻って彼女たちのほうを見た。

「名前っ!」
「へ、あ、悠くん」

田島の呼びかけに名字さんは本から視線を外し、田島を見てにっこりと笑った。田島もにかっと笑い返す。
楽しそうに会話をする二人。名字さんって田島と知り合いか何かなのだろうか。


「じゃあ、俺そろそろ戻るよ」

会話は予令が鳴るまで続いた。
田島は次の授業は体育らしく駆け足で教室を出ていく。

「またなっ!」
「うん」

ドアの所で大きく手を振る田島に小さく返事をする名字さんは、俺が今まで見たことのないような、すごく嬉しそうな表情をしていた。


090719


ALICE+