05. 幼馴染の彼


名字さんと田島が楽しそうに話をしていた姿が頭から離れない。

結局、一睡もできずに昼休みが終わってしまった。あの後の授業も先生の話が頭の中に入ってこなくて、ぼーっとしていたら巣山に心配された。大丈夫だと告げると無理するなよ、と肩をぽんっと叩かれた。

頭が冴えないまま午後の授業も放課後の部活も終わり、今は皆で部室で帰りの支度をしている。

「ねえ、田島」

名前を呼ぶと、着替えの途中だった田島は何ー?と俺のほうに寄ってきた。
俺はさっきから気になっていたことを訊ねた。

「田島ってさ、名字さんと知り合い?」
「名前ー?うん、小学校が同じだった」
「へえ」
「そんで家が近い」
「そうなんだ」

小学校が同じ、か。だから仲が良いんだ。
田島と家が近いってことは学校の近くなのかな…って、あれ…?

「中学は一緒じゃなかったの?」
「あー、あいつは中学私立行って俺と別々」
「へ、そうなの」

いつの間にか田島は着替え終わっていて、他の奴らも帰りの支度が終わって部室の外に出ている奴もいた。俺は慌てて手に持っていた練習着をバッグの中に突っ込む。田島もやっと帰り支度が終わり、二人で部室を出た。


「西浦通ってんなら言ってくれればいいのにさー、あいつ俺に何にも言わなかったんだぜ!」

前方にいる皆とは少し距離を取って、自転車を押しながら校門に向かう。隣を歩いている田島は頬を膨らませながら溢した。

「名字さんにも何かあったんじゃない、きっと」
「…そっか」

そう言うと、田島は少し考えてから納得したように頷いて、にかっと歯を見せて笑った。俺もにこりと笑って、視線を田島から前方に移した。もうすぐそこに校門が見える。


「あ、名前!」

唐突に田島が言った。田島が見ている方を見ると、ここから少しだけ離れている所に名字さんがいた。
田島の声は意外と大きくて、何事かと前を歩いていた奴らが振り向いた。彼女も急に名前を呼ばれて驚いているようだった。

「俺、先に帰るから!」

田島はそう言うと、俺たちの返事も待たずに、自分の自転車に跨がり名字さんの所まで走っていく。

「あれ、田島の彼女?」

誰かがそう言ったのを聞いて、胸がちくりと痛んだような気がした。


090721


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