09. 第一回らーぜ相談会
ふう、とため息を吐くと、隣で練習着から私服に着替えていた西広に幸せ逃げるよー、と笑われた。
「名字さんの事でしょ?」
「…あー、うん」
「名前がなにー?」
「あ、田島」
西広にいとも容易くため息の理由を当てられた。名字さんの名前が出てきたことで田島も寄ってきた。
「名前って、この前田島が一緒に帰った奴だろ。付き合ってんの?」
「ううん、名前とは同小だったんだよ」
「えー、それだけー?」
泉の問いに田島はさらりと答えた。その答えに水谷は何か不満そうだった。…水谷ってそういう類の話好きそうだよなあ。そう思いながら彼らを見ていると、田島が名前がどうしたのー?と再度訊ねてきた。すると皆の視線が俺に集まり俺も、皆も黙り込む。
しん、とする中、突然巣山が声を発した。
「栄口はな、名字が好きなんだよ」
空気が固まったように感じた。
え、とぎこちなく首を動かし巣山を見ると親指をぐっ、と立てられた。いや、なにがグッジョブだ。沖と西広は苦笑していた。
「な、何言っちゃってんだよ…!」
「大丈夫だって、皆きっと協力してくれるさ」
「そうだよっ!」
「のあっ!」
水谷に抱きつかれ変な声をあげる。
早く言ってくれればいいのにさー!と言いながら俺の肩を揺らしてきた。頭がぐらぐらして、何だか気持ち悪くなってきた…。
「いい加減にしろ」
「えー、」
「ありがとう、花井…」
若干死にかけている俺を見かねてか、花井が水谷をべりっと剥がしてくれた。
深呼吸をして気を落ち着かせる。
「それで、名字さんと何かあったの?」
沖が本日三度目のその質問をすると、皆は一斉に俺のほうへ振り向く。
俺は居たたまれなくなってため息の理由を話し始めた。
「昨日から何か避けられてる感じがして、」
「へ、何で?」
「…一昨日、名字さん体調が悪くて送ってってあげたんだけど、その時何か変なこと言ったみたいで、」
「大丈夫だよ、栄口!」
「へ、田島?」
「名前にも何かあったんだよ。栄口が嫌いとかじゃないと思うから大丈夫!」
田島はにかっと笑い、俺の肩を叩いた。他の奴らも、協力するから!頑張れ!と応援してくれて、俺は嬉しくて涙が出そうになった。
「さ、栄口 くん!」
名前を呼ばれ振り返るとそこには三橋がいた。
三橋は俺の手を取りぎゅっと握って、俺を真っ直ぐ見た。
「俺 も、応援、してるか らっ!」
「三橋…、ありがとな!」
にこりと笑いながら礼を言うと、三橋はウヒっと言って何度もコクコクと頷いた。
不意に肩を叩かれる。
「あ、阿部」
「まあ、せいぜい頑張れよ」
俺も応援してるからな、と滅多に笑顔を見せない阿部がにかっと笑った。
「最近機嫌良いよな、阿部」
「阿部キモいー」
「クソレフトは黙ってろ!」
「あっ、酷い!」
「お前ら止めろよ」
花井と水谷と阿部のやり取りを余所に、俺は皆の優しさを噛み締めていた。
持つべきものは友人だ。
090801
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