もう、逃げない


「名前の、ばかっ!」

作兵衛はそう言うと、名前の手をぎゅう、と握った。

「もう関わらなくていいよ、とか、何だよそれ!何でそんなこと言うんだよ!」
「…ごめん」
「ごめんなんて言うなよ!」
「…作兵衛、」
「何が原因なんだよ…。俺に原因があるっていうなら頑張って直すからさ、」

目を伏せる作兵衛。あんなに酷いことを言ったのに、作兵衛は自分を追いかけてくれて。それがとても申し訳なくて、でもとても嬉しくて。
名前の目からぼろぼろと涙がこぼれる。

「…名前!?」
「僕も、作兵衛と友達でいたいよ…!」
「…!俺だって…!」

名前につられて作兵衛の目から涙がこぼれた。
その後、なかなか部屋に戻ってこない二人を心配して左門たちが探しにきて、泣いている二人に驚いていた。なに泣いているんだ!と左門が二人に突撃してきて、それを藤内と数馬が止める。三之助は面白そうに見ていた。

「あいつらに何かされたのか?」
「…あいつら?」
「い組の奴ら」
「ううん」
「…それならいいけど、」

孫兵の問に、名前は笑って答えた。普段あまり笑ったりしない彼が笑ったことに驚きながらも、孫兵は言葉を続けた。

「何かあったら言いなよ。名前はいつも黙ってばかりなんだから」
「うん、多分、もう大丈夫」
「…?何が」
「僕も、向き合わなきゃいけないから」

そう言って視線を向けた先には、先程名前を悪く言っていた忍たま。名前は彼らに向かって歩き出した。忍たまは先程のことがあってか、逃げ出そうとした。

「待ってよ!」

普段出さないような大声で呼び止める。案の定、動きの止まった彼らに近寄った。何事かと怯えた彼らに、名前は手を差し出した。

「友達になろうよ」

名前の言葉に彼らだけでなく、作兵衛たちも呆気にとられた。構わず名前は続ける。

「君たちが気味悪がっていたのは、僕に悪いところがあるからでしょ?だったら直すよ。だから、僕と友達になろうよ」
「…何で、」
「…?」
「何で、今まで自分のこと悪く言っていた奴らに友達になろうとか言えんだよ!」

そう吠えた忍たまに、名前は首を傾げた。

「何でって、友達になりたいから?」
「…答えになってない」
「そんなこと、どうだっていいよ。本当、友達になりたいだけなんだ」

だって、同じ教室にいるのに仲良くしていないって寂しいもの。そう言って笑った名前に、忍たまはぽかんとした。

「…お前って、笑えるんだな」
「僕だって人間だもの、笑うよ」
「………」
「…どうしたの?」
「…ごめん、」

謝ると、忍たまは泣き出してしまった。どうしたことか。慌てる名前を後目に、忍たまは続けた。

「今までごめんな。お前だって人間なのに、人間らしくないとか言って、」
「…もういいよ。これからは仲良くしていこうよ」
「…うん」

よろしく、の意味を込めて握手を交わした。


110221


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