07.


昔から疎まれることには慣れていた。自分は危険だと言われている生き物をたくさん飼っているし、周りの人間たちが僕を煙たがるのは当然だ。
今日も一人で生物小屋に向かう。僕は、接し方さえ気を付ければ彼らは危険ではないことを知っている。だから、こんな風に彼らを愛することができるのだけれど。ああ、早くジュンコたちに会いたいなあ。生物小屋が見えてきて、歩く速度を速める。到着してみれば、そこには見慣れない桃色装束。その首に巻かれている赤色は――

「何やっているんだ!」

思わず大声を出してしまった。だって、くのたまがジュンコを首に巻いているなんて誰が想定できようか。これはきっと新手のいじめだ!
僕の声に、くのたまはゆっくりと振り返った。その顔は何とも無表情である。

「この蛇は君のかい?」
「そうだ!早く返せ!」
「はい、どうぞ」

そう言ってくのたまが差し出した腕を伝って、ジュンコは僕の腕に巻きついた。何もされていないことを確認し安堵していると、前方から笑い声が聞こえた。

「…何?」
「いや、この子が小屋から逃げ出そうとしたから捕まえておいただけなんだけどなあ、て」
「…え、」
「あと、君三年生でしょ?私、くのたま四年なんだけど」
「あっ、」

今更気付いた事実。彼女はジュンコが逃げ出すのを防いでくれた。しかも自分より年上。

「すみません!」

僕は何という勘違いをしていたのだろう!ああ、もう、きっと顔は真っ赤だ。
急いで謝罪をする。彼女は、謝らなくて良いと笑っていたけれど、自分自身納得いかなくて、何度も謝る。そんな僕の態度に、彼女は困ったように頬をかきながら、ある質問をした。

「ねえ、君は煎餅は好きかい?」
「え、まあ、普通ですけど…」

少しどもりながら答えると、彼女はにこりと笑いながら懐から包みを取り出した。そこから、煎餅を一枚取り、僕の方に差し出す。思わず首を傾げる。

「さっきから泣き出しそうな顔しているから。これでも食べて落ち着きな」

まるで泣いている赤子をあやすかのようなその声色に、気持ちが安らいでいくように感じた。おずおずと受け取り一口齧れば、しょっぱい醤油の味。煎餅よりも甘い饅頭の方が好きなんだけどなあ、と思いながら食べていると彼女が優しく頭を撫でてきた。

「落ち着いたか?」
「はい…」
「そっか、なら良かった」

それじゃあ、と踵を返したその姿に、僕は慌てて声をかける。何だ?というようなその顔に尋ねる。

「あなたの名前は何ですか?!」

彼女は一瞬ぽかんとした表情を見せたが、すぐににこりと笑って答えた。

「私の名前は、名字名前さ」


これが名字先輩と僕の出会いであった。


120422


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