08.
今日も学園はいつも通り。屋根の上で観察しながら、何だかつまらないなあと感じた。ちなみに、いつも隣にいた伊賀崎は最近はいない。これで良い。少しだけ寂しいとか、きっと気のせい。
ぼんやりと思考しながら何気なく下を見やると、いつか見た萌黄色。確か伊賀崎の友人だったなと思い、話しかける。
「そこの少年」
「あ、この間の先輩だ」
「何しているの?」
「長屋に行こうとしたんですけど、あれ?」
首を傾げている少年につい呆れてしまう。どうやら彼は迷子らしい。
「名前は?」
「次屋三之助です」
「そう。次屋は長屋に行きたいんだっけ?」
「まあ、そうですね」
「連れていってあげるよ」
そう言って、手をとって歩き出す。次屋は不思議そうに私を見てきた。
「先輩の名前は?」
「私かい、私は名字名前だよ」
「孫兵とはいったいどういう関係で?」
「伊賀崎が私に引っ付いてくる、ただそれだけさ」
「なるほど」
私の答えに次屋は数回頷くと何か考え込んでしまった。暫くして、がばりと顔を上げた。
「名字先輩、」
「ん?」
「先輩は伊賀崎のことをどう思ってんすか?」
それは唐突な質問。はたと思考が止まる。はたして、自分は伊賀崎のことをどう思っているのか。
「…他人とは思えないけれど、何だろうな、分からない」
今まで、自分さえ良ければなんだって良かった。いつだって私の中にあるのは他人と自分だけ。それなら伊賀崎は他人なのかと言われたら、肯定できない自分がいる。自分と他人のどのカテゴリーにも入らない存在。それはいったい何と呼べばいいのだろうか。
(脈有りじゃん)
ぐるぐると考えている私の隣で、次屋がガッツポーズしていたのには気付かずじまい。
120422
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