05.


事あるごとに無視され怪我させられ、でも鉢屋には優しくされて。
私も人間、年ごろの女子であったので好いている人がいました。あの人だったら良かったのにと思うときもありました。けれども、私は自分が思っている以上に弱い人間だったので、鉢屋から与えられる一時の温もりに縋ってしまうのです。

そんなある日、あの人が私の前に現れました。あの人とは私の好いている人です。
あの人も私のことを気にかけてくれたのでしょうか。少しばかり、期待してしまったのです。

「三郎は嘘をついている」

彼、兵助は告げました。思わず自分の耳を疑いました。

「嘘を…?」
「そうだ、お前を好いているふりをしているけれど、本当はエリ子さんを好いているんだ」
「………」
「だから三郎に近づくな」

そう淡々と言って、兵助は踵を返して去っていきました。
なんだ、そっかあ。鉢屋は嘘をついていたのか。上げてから落とすのってとても痛いものね。納得。
それを私に告げた兵助も、遠回しに鉢屋に優しくされて調子に乗るなってことを言っていたんだね。納得、納得。

背後からここ数日で聞きなれた声。名前を呼ばれたから、くるりと振り返る。

「あんたなんて大嫌い」

彼は驚いて、それから泣きそうな顔をした。何でそんな顔するの。

鉢屋も兵助も、皆みーんな大嫌い。


110208


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