Don’t think about anyone else




現代文の授業が終わった時ヒーロー科1年A組のレスキュー訓練中に敵連合が襲ってきたらしい、とクラスメイトが騒いでいた。興奮した様子で大きな声で話していたため嫌でも耳に入ってきた。オールマイトを狙ってきたこと、全員無事であるが重症者も軽症者もいると。


「ふぅん」
「何、気になんの」
「いや、意外と雄英も安全じゃないんだなって」
「なんだ」
「なにが?」
「てっきりあの赤白頭を心配したのかと」
「もしかしてB組かもよ?」


そういえば彼はヒーロー科だった。というよりそもそもクラスも名前も知らなかった。私は彼のことをイケメン赤白頭くんと心の中で呼んでいたからだ。これからもきっとそのままであろうと思っていた。


「帰らないんだ」
「いーんかいがあるのよ、いーんかい」
「あぁ、頑張れ図書委員」
「うるさい顔に似合わない美化委員め」


心操くんは無表情で鞄を持って教室から出て行ってしまった。薄情なやつめ。といっても図書委員なんて本を棚に返したり特設コーナー作ったり本を読んでもらうための布教活動をするくらいだ。基本やることがないため、とりあえず時間まで棚の隅で好きな本を読んでいる。ふ、と気づくといつのまにか委員会の時間である2時間が経っていた。夕日は沈みかかっている。


「「あ」」


学校の門のところには警察やら報道やら野次馬が集っていた。うーん、帰りにくい。どうしたもんかと悩んでいると左の方から最近見かけるイケメン赤白頭くんがやってきた。クラスメイトだろうか、赤い髪とか金髪とかの人もいた。擦り傷のような怪我、クラスメイトは包帯やガーゼなとが付いている。彼は件のA組だったのか。


「校舎の方は被害はなかったみたいでよかった」
「あー、敵が襲ってきたんだっけ?えーと、大丈夫...そうだね」
「心配してくれんのか」
「社交辞令ってやつ?」
「嬉しいな...」
「あれ、私の言葉届いてる?」


どうも彼とは話が噛み合わない。そもそも地味に平々凡々な生活をしていた私だ。イケメンに好意をもたれるようなことをした覚えはない。誰かと勘違いしているのであろうか。そういえば彼の名前を知らないし私も名乗っていない。


「私、1年C組普通科の名字名前」
「あぁ、知ってる」
「あれ!?」


まさかの知ってたパターンであった。私は名乗った覚えないから誰かから聞いたのだろうか。ますます怖くなってきた。頭の悩ませていると、金髪ツンツン頭の青年がニヤニヤしながらイケメン赤白頭くんに近づいてきた


「おいおい轟、普通科の女の子とどういう関係なんだよ」
「それ私が一番聞きたい」
「婚約者だ」
「「「は!?」」」


ちなみにルピはフィアンセであった。いやそんなことはどうでもよくって。婚約者?フィアンセ?なにそれどうしたの。漫画でよくある親同士が決めた相手、みたいなやつ?そんなばかなうちは普通の一般家庭だ。そんな由緒正しい家柄でもない。
私を含めた他の人間たちは氷のように固まってしまった。雰囲気を凍らせるのが彼の個性なのか。彼のことを今度からフローズンイケメンと呼ぼう。フローズンイケメンくんは2歩前に進み、私の前に立ち、私の手をとってこう言った。


「必ず幸せにする。子どもは3人欲しい」



家に帰って母親に、親同士が決めた婚約者がいるのか聞いたら「こいつ頭大丈夫か」って顔をされた。解せぬ。





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