140字ssと書きかけ



140字前後の文章と
書きかけで止まった中途半端な文章。
既に短編になってるのもあります。

密室

(文アル/堀・乱歩)
たっちゃんと乱歩さんの話。ほぼ1年放置。もうどこに着地させるつもりだったか思い出せない…。

※夢小説ではありません

もう一度試してみる。……やはり開かない。
密室という言葉が頭をよぎる。彼が好みそうな言葉だ。

「乱歩さん、何かしました?」

ゆっくりと振り返り、そう訊いてみる。この時ばかりは、笑みを浮かべて頷いてくれることを期待した。悪戯ならそれでいい。彼が悪戯好きであることはわかっているし、自分が揶揄われる対象であることも充分わかっている。
しかし、ダンボールを抱えたままの乱歩は首を左右に振った。嫌な汗が背中を伝うのがわかった。
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夜を歩く

ずんずん進むからついて行く。暗くなって、寒くなって、それでも歩き続けた。突然足を止めた太宰先生は身体を投げ出すようにして寝転がった。私もそれに倣う。見上げた星空はひどく綺麗だった。「どこまでついてくるの?」「どこまでも」「もういいや、帰る」冷たくなった手を握り、並んで歩き出した。
(140字/太宰治)

別離

いなくなるのですかと先生が言った。くいと袖を引かれる。補修が終わって後は回復を待つだけのはずだった。先生は目を閉じていたのに、私が離れようとしたからか、もう目を開けていた。いなくなりません、ここにいますと答えたら、また目を閉じた。別れは何度経験しても辛いのだろうとぼんやり思った。
(140字/川端康成)

理由

色をのせていく。新しい世界を作り上げていくような、そんな感じがする。「うんうん、そんな感じです」にこにこして見ているであろう彼の顔が見れない。きっと絵を描くどころではなくなるから。絵を描くのは楽しいけど、本当の理由はあなたともっと仲良くなりたいからと言ったら、怒るだろうか。
(137字/武者小路実篤)

本人

昔から何度も繰り返し読んだ作品。何度読んでも色褪せない、大好きな作品。ぱたんと本を閉じて滲んだ涙を拭ったところで、向かいにいつの間にか彼が座っているのに気付いた。私の手元にある本をじっと見つめている。読んでいたのは彼の作品だった。無性に恥ずかしくなって、表紙を隠した。
(134字)

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