傷のある薄い唇に己の唇を触れられ、ただそれだけで腰に甘い痺れが走った。
先程当たった熱を忽ちに自分のモノで押し返してしまう。龍司はそれに満足したのか、遠慮なく行為を噛み付くものに変えた。
自分のよりも分厚い舌が口内を蹂躙する。桐生はまるで足りない成分かのように龍司の唾液を飲み込んだ。それでもツツ、と口の端から垂れてしまう。
幾度かのリップ音をたてながら名残惜しそうに離れると、龍司の熱い視線に最後の理性が焼き切れた。何故こいつは黙るだけでこんなに格好良いんだろう。口を開く度に何かをおちょくっていると思っていたが、黙られると。待たれると弱い。
「あかん」
何が、だ。
そう声にする前に桐生はグイッと持ち上げられ肩に担がれる。桐生にこんなことができるやつはそんなにいる筈がない。龍司はそのままずんずんと部屋を突っ切り、やや乱暴にベッドへ桐生を放り投げた。
これにはギシン、と高級ホテルのベッドも流石に軋み悲鳴を上げた。
「せっかく初めくらい優しくしようと思うっとったのに、そんな顔されたらもう無理やで」
桐生の眉はすっかり下がり、半開きのままになった口からはまだどちらのかわからぬ唾液が漏れていた。まだキスしかしていないのに、目にはもう涙が浮かんでいる。欲しくて堪らない。実際そうとしか桐生は考えられていなかった。
チ、と舌打ちをして怒りながら龍司は桐生に覆いかぶさった。まずはこの忌々しき服をすべて退かさなければならぬ。
桐生の我慢できていない口にまた噛みつきながら、龍司はとにかく桐生を脱がせた。この際若干乱暴になるのは致し方ない。剥ぎ取ったものをバサバサと横に投げ捨て、とうとう染みの広がったボクサーパンツも躊躇なく降ろしてしまった。
……こいつ、余程懐柔されたことがあるんじゃないか。龍司がそう思うほどに、桐生の中心は既にしっかりと勃ちあがりダラダラと蜜をこぼしていた。イキやすくされているのか。何処の誰にだ。
龍司の怒りはますます高まっていったが、止まらぬ興奮と相まって彼に焦りを与えていた。桐生のモノに手を伸ばそうとして、己がまだ服を着ていることに気がつき、邪魔だ邪魔だと先程と同様に投げ捨てていく。
「龍司。 怒ってるのか?」
ますますへの字に下げた眉で、桐生がこちらを伺っていた。
「……怒ってへんわ。」
嘘じゃない。怒りなんてどうでもいい程に、愛している。
ほ、と桐生が息を吐いた。
「そうか。 俺は……その、綺麗ではないから、怒らせたのかと」
「怒ったわ」
え?と桐生が言うより前に、龍司はそのまま桐生の中心を握った。
「龍司、あっ」
そのまま早急に扱いてやる。
「あっ、ああっ、」
いつもより少しだけ高い桐生の鳴く声に嬉しいやら腹立たしいやら、とにかく興奮して喉笛に噛み付いた。ひ、という声にならぬ音が震えている。
それだけで多少気を良くして、龍司は噛みつき、舐めて、吸って、そのまま胸の方へ下っていった。
意外なことに、胸の突起は開発されていないようだった。ならば、とばかりに下の快感を強くし、同時に甘噛してやる。
「りゅ、ああっ……!」
ここはこれから俺がずっと、ここだけでイカせられるくらいに、してやる。強い快感と同時に捏ねくり回し、脳に気持ちいいと錯覚させていくのだ。
「あっ……!りゅうじ、もう、」
イキそう、と口元だけで桐生が訴えた。
「イケや。遠慮することないんやで。」
ほれ、と耳元で囁きながら一層強く扱いてやる。
「あっ……!!アアッ……!!い、く、」
また甘い音を漏らしながら、桐生の身体がびく、と強くしなった。直後に龍司の手や桐生の腹へたぱたぱ、と熱いものが降り掛かった。
ハアハアと肩で息をする桐生は、快感ですっかり眦から涙を流していた。締まらない口からも、またツー、と唾液が溢れた。
こんなにかわいらしい人がいるのか。リードしていた筈の龍司もすっかり目が回っていた。
まだ落ち着きを取り戻せていない桐生を無視し、先程かかった桐生の精液を潤滑剤にそのまま後ろの穴へつぷ、と指を入れた。
「あぁッ?」
素っ頓狂な声を出して桐生が驚く。しかし龍司は急がねばこの桐生を見つめたままイッてしまいそうだった。そんなことは絶対に許されない。
龍司の無骨で太い指が、焦りを隠せず、しかし大切そうに、桐生の中を開いていく。
桐生は快感の波を泳いだまま、ただ喘ぐことしかできなかった。その隙に一本、もう一本と入れ、中でバラバラに動かす。やがてくっ、と龍司が桐生の中、腹の方を押した。
「あぁッ――!!」
ほぼ悲鳴だった。しめた。
龍司は確かめるようにニ、三回そこを掠めると、ようやっと指を桐生の中から出した。すっかりふやけてしまっている。
「ちょっと待て」
最高にボルテージを上げた直後、桐生からストップがかかった。
「その……大きくないか」
「知らん」
これには龍司はもはや相当キレていた。先程のストップは聞かなかったことにする。
先を充てがうと、桐生の下は柔らかく、嬉しそうに龍司のモノを飲み込んでいった。
「――ッ!!!」
桐生自身はあまりの質量に、全意識がそちらに持っていかれて目の前が真っ暗になっていた。声にならず、はくはくと浅い呼吸を繰り返してしまう。
「アホ、ゆっくり吐くんや、ッ」
龍司の声は桐生の耳に届いていない。
「アァ、くそ、」
龍司はなけなしの理性をかき集めてゆっくり腰を進めるが、桐生のナカがあまりにねっとりと自分のモノに絡みつき締め付けるのでキスはしてやる余裕がなかった。そう言う龍司の息も、しっかり吸えず絶え絶えになっていた。
ゆっくり、ゆっくり。そう思っていたが、残り少しはやはり無理をした。ズン、とついた奥に桐生が「ひん、」と情けない音を出した。
ふー、ふー、と数回息を吐き、そこでやっと龍司は桐生に口づけができた。
桐生の口は、上も下もとうとう黙ることを忘れてしまったらしい。キスをしながら律動を開始するとひっきりなしに音を漏らした。
熱い。押しても引いてもぴったりで、もともと一つだったかのようだ。
桐生が自身の腕の所在に困り龍司の背中へ回すと、二人の龍が熱を放ったようだった。
「は、あかんわ、」
もともと余裕がなかった所為もあり、龍司の限界もそろそろ近かった。イキそうやわ、と桐生の目を見ながら伝えると、桐生の顔が最高に溶けた。
「ア、龍司、」
俺もだ。と答えた桐生の、愛しい人の理性をすべて消し去りたくて、龍司は律動と同時に桐生のモノを握った。
「おいっ……! アア、、あぁっ!」
イヤイヤ、と身体をくねらせ出すと同時にナカがよりキツく締め付けてきて、龍司はそのまま腰を強く動かした。先程見つけたところを出しざまに引っかけてやる。
「あ……!ダメだ、龍司……!」
ダメなもんか。だってこんなに、イイんだから。
「……、くっ」
龍司は数回律動を強めると叩きつけるように奥へ性を放ち、桐生もほぼ同時にこぽ、と弱々しく精液を吐き出した。