いつの間にか寝てしまっていたらしい。
桐生はじっとりとした汗で己の首筋にシャツが張り付くのを感じながらふと目を覚ました。と、同時に感じる、下半身の浮遊感。
ガバッと上体を起こすと、ちょうど剥き出しの己の息子を間近で見つめ、口を開けている錦と目があった。
「あ」
「アァ!?!?」
変な声が出た。
「おまっ……にしき、何してんだよ!」
「あー……」
口を開けたままの錦が、よくわからぬ音声を発したかと思うと……そのまま桐生のモノを口に咥えた。
「ッ……!!」
唾液がよっぽど出ていたのか、錦の口の中はぐちゅぐちゅと水分を含んでいた。
こいつ、またか。
「おい、やめろ錦」
ドスを効かせた声で威嚇する。
実は一週間ほど前にも同じようなことがあった。その時はパンツを脱がそうとしているときに気づいたので、未遂だった。いくら問い詰めても、「すまんすまん」とヘラヘラしていた錦に、酔っているのか、と片付けた俺がいた。
酔っているのか、じゃねえ。酔ってても駄目じゃねえか。
錦は咥えたままこちらを見上げ暫く静止していたが、ジュル、と唾液を零さないように吸って口を離した。……クソ。
「……わりぃ。勃ってて気になったから」
「テメェ……」
勃ってて気になったから、だ?
……勃ってて気になったから???……全然わからねえ。
「でも、お前のすっかり元気だぜ」
ほら、と錦が手で俺のを持ち上げた。
半勃ちになった息子と髪をあげた錦の顔が視界の中心でセットになっている。……混乱を極めて意識が飛びそうだが、ここで飛ばしたら事態が悪化の一途を辿る気がする。
「ぁ、お前、まだ大きくなるのかよ」
「やめろ、触るな」
元より寝ている状態で勃っていたのだ。それは……若干恥ずかしいが、男ならよくある事だろう。それを咥えられたり触られたりしては、反応しない方が難しい。
桐生は部屋を見回した。まだ外も暗い。その上暑さで窓が開いている。大声で騒ぎ立てるのは良くない状況らしい。
「おい錦、退け」
「えー……」
「お前、酔ってるのか?」
酔ってても駄目なもんは駄目だが。
とはいえ仰向けで雑魚寝していた俺の脚の上に、錦はうつ伏せの状態で乗っかりガッチリとホールドしている。……重い。それに暑い。
先ほど舐められて錦の唾液のついたアソコだけが、錦の吐息を受けて少しスースーとしている。最早桐生の息子は完全に反り立ち、硬度を増して割れた腹筋についていた。
「うまそ……」
ぱくり。錦は何を考えているのか、再び桐生のモノを口にした。
「ッ……!!、ア」
ビク、と大きく桐生の身体が揺れる。
「アッ……おま、にしッ、ヤメ……」
じゅぼじゅぼと錦の口の中で吸われる。信じられないくらいきもちいい。
何より錦の口から自分のモノが出たり入ったりしている光景が、何やらボーッとアダルトビデオを見ているかのようで桐生の思考を奪っていった。
最後の矜持でバタバタと暴れてみたが、錦が体重ごと乗せた腕はビクともしなかった。
わかったぞ。こいつ、頭湧いてる。
錦山は桐生のお尻の穴とタマの付け根の間、をトントン、とノックしながらフェラチオを続ける。桐生は未だかつて味わったことの無い快感に、とうとう思考を停止させてしまった。
「ぁッ……、ぐ、あっ……」
イキそうだ。まさかこのまま口に出させられるのか。……そう桐生が半ば期待した瞬間だった。
「あっ、ちょっと待て、イくなよ」
「ぐッ……!!」
錦がギュッと桐生の根本を押さえ、裏筋を圧迫した。出す直前まで昂ぶられた精子が中で切なそうにしている。
「お酒入ってんだから何発もイけねえだろ?」
そう言いながら錦山はよっこいしょ、と状態を起こし、片手でハーフパンツを下げた。
桐生は今こそ錦山を退けるチャンスだったが、射精管理をされている苦しさと快感で思考を奪われ、まったく身体に力が入らなかった。
……錦山の陰茎も、何故かゆるりと立ち上がっていた。
はぁ、はぁと肩で息をする桐生に、錦山はそのまま跨った。桐生は後ろ手だけついているので、半ば対面座位のような形になる。
「我慢しろよ」
錦山の声が聞こえたが、何を我慢するのか、我慢するのは一体どっちなのか、桐生は理解が追いつかなかった。
つぷ、と錦のよくわからぬ穴に、桐生のすっかり硬くなりダラダラと汁を零すそれが充てがわれた。
まさか。……挿れるのか。
そう思ったときには、桐生のモノは既に錦山のナカに入っていた。
「ぐ、ァァ……!!」
桐生の口から呻きとも叫びともわからぬ音だけ飛び出す。……快感と熱さで既に蕩けたような感覚であったが、桐生は必死にそれを耐え凌いだ。
見遣ると、より辛そうにしていたのは錦山の方だった。ギュッと眉を潜め目を瞑り、痛みなのか快感なのか、ガクガクと小刻みに揺れながらじっとしている。
二人の接合部はあまりにもミチミチで、桐生は動けないだろうとさえ思った。
一方錦は少しの間息を荒くしじっとしていたが、やがて落ち着いたのか、桐生の腹に手をつきゆっくりと腰を上げようとしていた。
「動くぞ」
ちょっと遅めのご報告有りである。
挿しているのは桐生の方なのに、主導権はそのまま錦山にあった。
部屋には二人分の荒い呼吸音と呻き声が響いている。時々小さめの冷蔵庫が、熱を放出しているのか低い音をたてた。
「ッ、く、あ」
桐生は錦の与える快感にひたすら殴られ続けた。そう長くはない時間それに耐えると、次第に焦れるようなその動きに、桐生の腰も勝手に動き出した。
「アッ……きりゅ、うご、、やめッ」
下からの強い突き上げに、錦山は悲鳴をあげた。
しかし桐生はもう聞かない。脳は茹で上がってしまったのか、こいつに種付けしよう。その意志でいっぱいになっていた。
「アッ、きりゅうッ……!!」
ガツガツと奥を突かれ迫りくる快感がおそろしく、錦山は桐生に抱きついてしまった。錦の纏めていた髪はいつの間にかハラリと解けている。……そこからは早かった。
「ッ……イく、ック……!!」
「……」
錦がビクビクと戦慄くと同時に、桐生もその中へ精を放った。
「すまん」
少し落ち着くと、桐生は罪悪感に苛まれていた。襲われたのは自分であるとも言えるのに、口から出たのは追求ではなく謝罪だった。
一方、錦山は息は荒いまま、しかしケロッとしていた。
「……なんでお前が謝んだよ」
「……」
「わりぃわりぃ。俺がいけないよな。つい、な、つい」
「……痛くねぇのか」
この状況でも桐生は錦山の身体を案じていた。
「死ぬほどいてえよ……お前、童貞じゃないんだからがっつくなよな」
ピシ、 と桐生の身体が固まった。
「え……? あれ……? お前……あれ」
「……さっさと退け。シャワー浴びてくる」
桐生に荒々しく退かされ、錦は急いでティッシュを取りながら桐生の背中を見送ることしかできなかった。
……うそだろ。
ちょっと前に女抱いた話してただろうが……!