深く深く口づけた。

 酸素が足りないと思えば、より相手の口を吸った。時折龍司が甘く桐生の舌を噛んだ。痛みに脳みその後ろの方がジンジンと熱くなる。
 やがて龍司はキスを啄むものに変えると、そのまま一度、額に口づけた。
 確かに最初に会ったときはまだまだ若いと言える二人だった。その時なら恥ずかしくて顔も見られなかっただろうが、今はもういい歳の大人だ。
 に、と一瞬口だけで笑うと、龍司は桐生を抱えあげ、寝室へと向かった。


 龍司は桐生を優しくベッドに横たえると、先程の話でひとしきり泣き、すっかり赤くなってしまった目もとに口づけた。そのままゆっくりと降りて、また口へ辿り着く。

 大切にしてくれ。
 大切で、陳腐なものにしてくれ。

 龍司はキスをしながら桐生の服を剥ぎ取った。優しく優しく、そのまま下へ降りていく。期待で血の集まった桐生のモノは、既に与えられた衣服を押し上げていた。
 それも丁寧に取り除くと、ベッドの上には何も纏わぬ桐生一馬が横たわっていた。
 龍司は愛しい気持ちのまま、片方の足を持ち上げ太ももの内側に口づけた。今度は中心へ、キスをしながら上がっていく。
 中心へ到達する頃には、桐生のモノは一つ一つのキスにぴくぴくと一々反応するようになってしまっていた。

 カプリ、と頭から咥えた。桐生はとっくのとうに龍司から目を逸らし顔を腕で覆っていた。吐息が漏れ、腰がびく、とだけ浮いた。

 そのまま大きな口でじゅぽじゅぽと上下させると、桐生はつらそうに息を吐く。桐生のお腹が呼吸に合わせてへこへこと動くのが愛しくて、龍司は思わずそこに手を伸ばしてしまう。桐生は快感で気づいていないようだった。数秒すべすべとその割れた腹筋をなぞった後に、龍司はその手を桐生の後ろの穴へと伸ばした。
 きゅ、と締まったままのそこを数回なぞると、前を舐めていた口を離し、舐めてやる。桐生は顔を隠すのを忘れ、前の快感を逃がそうとしていた。

 クッと、一つ力を入れ、指先を埋める。
 違和感を感じたのだろう、桐生が小さな声を漏らした。そのままゆっくり、ゆっくりと押し進めていく。快感を感じるように、龍司の口は再び桐生のモノを納めた。

「あっ……ク、りゅう、じ」

 舌でベロベロと亀頭を愛撫しているときに、桐生が名前を呼んだ。

「……なんや」

 口を離して聞いてやる。指はようやっと一本埋まろうかというところだった。

「ぐ……そこ、なんか、くる」

 ……前立腺だろう。龍司は応える代わりに、中でそこを小さく押し上げた。

「あっ、アアッ!! なんか、へん、へんだ……」

 ヘン、か。覚えれば気持ちいいのだろう。口淫を同時にしながらそこを押していく。

「アッ……や、やめろ……! 龍司、くるし……!」

 身体をビクビクと波打たたせていた桐生だが、とうとう自らの腹筋で起き上がってしまった。脚を抑えていた筈なのに、桐生のあまりの痴態に気が緩んでしまっていたか。
 桐生はまだ咥えたままの龍司を見下ろすと、カーッと顔を赤くした。今更だな。かわいい。

「もういい……挿れてくれ……」

 半ベソを掻きながら訴える姿は、ただただ煽情的であった。ズボンの中がズキズキと痛み、龍司は自分がまだ服すら脱いでいないことに気づいた。

 ちゅ、とお腹にひとつキスをすると、龍司は身体を離し服を脱いでいった。たしかにこいつは今、もういい、挿れてくれと言った。快感が抜けきらないのか、陰茎をおっ勃てたまま苦しそうに息をしている。

 龍司は桐生と同じように一糸纏わぬ姿になると、ベッドの上の桐生へ覆いかぶさった。……大きさ的にはもう少し解さねばキツいだろうが、そこは気合いでなんとかしてくれ。……お互いに。

 どこか他人事のようにそう思いながら硬くたちあがったモノを桐生の穴へ宛てがう。驚くことに、桐生の方がこちらを見たままズッ、と下がり、挿れようとしていた。その光景に、龍司の配慮も散り散りになってどこかへ消えた。

 めり、という音ともに、龍司は桐生のナカへ腰を進めた。案の定まだ中は狭く、龍司にも痛みが伴った。

「ア……」

 より痛そうなのは桐生の方だった。一気に脂汗をかいてしまっている。
 そのまましばらく動かず様子を見よう、としたときだった。

「いい……動いてくれ……」

「あぁ?」

「いたく、痛くしてくれ……」

 桐生は泣いていた。

 そう言われても、と思っているうちに、桐生が勝手に龍司の腰に脚をまわし、ゆさゆさと自らの腰を動かし始めた。

「頼む……ァア……」

 困惑は続いているが、試しに一度動きに合わせてぐり、と押し込むと、桐生が甲高い声を上げた。
 その声で脳天を突かれ、思わず桐生の腰を掴み思い切り強く深くへ挿し込んでしまう。

「アアッ……りゅう、じ」

 身体中が沸騰した音がした。自分に貫かれ涙を流す桐生は、今まで見た中で一番綺麗だ。

 穢さなくては、とよくわからぬ衝動で、龍司は腰を振り続けた。桐生はひっきりなしに高い声をあげ身を捩っている。殊更に前立腺を押してやると、もう快感を覚えたのか高い声が甘く溶けた。

「きりゅう、」

 名前を呼んだ瞬間、桐生の身体がビクビクと大きく波打ちだした。

「あッ……イク、イク、りゅうじ、いくっ……」

 もう思考などすべて無くなった。
 龍司が強く前立腺を引っ掻いて腰を叩きつけると、桐生はそのまま何も出さずにイってしまったようだった。爪先がピンと伸び何かを引っ掻くようにバタつくと、ガクガクと身体を大きく揺らした。その直後にナカが強く締まったので、耐えきれず龍司も桐生のナカへ精子を放った。


 はあ、はあ、と、暫くは二人の荒い呼吸だけが響いていた。
 少し落ち着いて龍司がナカからずるりと出たときに、桐生がまた甘く啼くので思わず龍司は顔を覆ってしまった。

「龍司」

 まだ精神統一の最中だ。

「もっと……痛くしてくれ」


 思わず言葉を失った。
 いまので不満足だった、とか、これがこいつの性癖か、とか、色々なことが一瞬で頭を過ぎった。

 しかし、きっとそうじゃないだろう。
 桐生は苦しそうに涙を流していた。