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「あんたの大好きなミトスくんと戦わなくてすむんだ。もちろん、戦うみんなの姿も見えない。知らない間にことは進んで、知らない間に終わる。その方がいいんじゃねえのか」
「……そう。やっぱりこれは、ミトスくんなりにわたしに優しくしてくれているって思っていいのかな」
「さてね」

ゼロスくんは肩すくめるだけで何も答えない。結構ポーカーフェイスが得意なんだなって、さっきの騒動で知ったけれど、今も全然彼の気持ちはわからない。
わからないけれど……わたしの答えは決まっている。

「……でも、それじゃあ……わたし、ミトスくんのそばにいられないよ」

知らない間にことが進んで、知らない間に終わっていてくれるなら、きっとわたしは苦しい思いをしなくて済むだろう。しんどい思いをして戦わなくてもいいし、泣きそうになりながら話をする必要もない。起こったことをそのまま受け入れて、そのまま受け流して生きる。うん、わたしの得意な生き方だ。
でも、それはもうしないって決めた。そんな風に、他人任せにした方がもっと苦しいって、わかっているから。知らない間にミトスくんの行く先が決まってしまったら、わたしは彼と向き合えなかったってことだ。そうなってしまったら、わたしは絶対に、胸を張って彼の隣にいられない。
わかるよ。勝手に気まずくなって、勝手に申し訳なくなって、勝手に落ち込んで、一緒にいられないって泣く自分が、簡単に想像できるもん。

「わたし、ミトスくんのしたことが許せない気持ちも本当だし、一緒にいたい気持ちも本当だよ。戦いたくないのも本当。だから……戦うなら、そこに、いなくちゃいけないって……決めちゃった」

ミトスくんを倒す。彼のやろうとしていることは止める。
でも、ミトスくんを殺させない。彼がいなくなってしまうような、そんな終わり方は認めない。認めたくない。
それを訴えるためには、実現するためには。わたしは、彼の手を掴んでいないといけない。一緒にいたいって、言い続けなければいけないのだ。

「だいたい、怒っていいって言ったのはゼロスくんも同じだよ。あんな奴、怒って当然だって」
「……それ聞いて、俺さまが本当に道を譲るとでも?」
「思ってる。……それに、ちょっと気付いちゃった」

時間稼ぎのつもりなのか、おとなしく話を聞いてくれるゼロスくんを見て、わたしはちょっと意地悪く笑う。
これは賭けだ。そうだったらいいなって気持ちを、さもそれが真実だとばかりに語ろうとしているだけ。
でも結構自信もあるんだ。だって、ねえ。気付いちゃった。ううん、知ってたことだけど。やっぱりそうだって、思っちゃった。

「ゼロスくん、ロイドたちのこと大好きでしょ」