123-2

その声が聞こえてきたのは、上の方からだ。思わずみんなで視線を上に向ければ、この部屋の二階にあるのだろう通路に、その姿があった。
たった今、ファイヤーボールを打ったのだろう、ジーニアスの姿が、そこにある。
ううん、彼だけじゃない。その後ろにはしいなも、リフィルさんも、プレセアちゃんも、リーガルさんもいた。
みんな、遠目からでも服の裾が焼け焦げていたり、顔が汚れていたりと、ぼろぼろなのがわかるけれど……それでも、光に満ちた瞳で、こちらを見降ろしていた。

「み……みんなっ!? どうして……無事だったのか!?」

そのぼろぼろになった姿は、ミトスくんのあらゆる仕掛けが施されているという言葉に嘘がなかった証明だ。きっと、彼が言ったように、ロイドを進ませるためにトラップを引き受けたのだろう。
いったいどんなやり取りがあったのか、わたしにはわからない。けれどきっと、誰か一人を置いて、犠牲にして前に進むような場面だってあっただろう。それは、ロイドが一番苦しいと思う方法だ。それでも託されたのだと、そう言ってロイドはここまで来た。
その気持ちに応えるように。ここに来て、立って、しっかりと前を見るみんなは。力強く、希望に満ちた目で、笑っていた。

「言ったろ。メインイベントまでには間に合ってみせるって」
「私と同じ苦しみを背負いたくなかったのだろう?」
「せっかく新しい世界ができようとしているのに、それを見逃す手はないわ」
「まだ……戦えます。戦える限り、あなたのそばにいます」
「へへーん、どう? 見直した?」

綺麗だな、と思った。こんな時だけど。
絶対に挫けないとばかりに希望を宿した瞳がきらきらと光っているのも、ぼろぼろの姿さえ気にならないくらいの力強い姿も。全部、綺麗だなって思った。

「みんな……よし、一緒に戦おう!」

ロイドの言葉を合図に、みんなが続々と二階から降りてくる。
ロイドは一度、わたしを見た。自分たちはこのまま戦うと、確認するように。

「ミトスくん」

ここでみんなに戦わないでって、声を上げることはできる。そうすべきかもしれない。でも、他の誰でもない彼が、ロイドたちに武器を向けるのなら、みんなに何もするなとは言えるわけがない。
わたしは、みんなが好き。誰のことも失いたくない。だからこそ対話をしようとして、さっきからずっと突っぱねられているわけだけれど。目の前で始まろうとする戦いの邪魔は、できない。
それも、ちゃんと覚悟していた。していたとも。苦しいけれど、戦わなくちゃいけないって、ちゃんと覚悟していた。そのうえで、それを避けるために話をしたいってここまで来たけれど……結局喧嘩にもならなかったなと落ち込んで。それでも、わたしはまだ、ミトスくんを諦める気持ちになんてなれるわけがなかった。

「ミトスくんは、わたしと一緒にいたくない? ……それだけ、ちゃんと聞かせてよ」

だから。まだ届くかもしれないから。まだ、戦わなくても、みんなで話し合って前に進めるかもしれないから。
わたしはミトスくんを見る。ミトスくんに話しかける。
もうそれだけでいい。それだけを教えてくれたら、それで。
そう思うのに。ミトスくんは……やっぱり、こちらには目を向けてくれなくて。わたしがここにいるなんて知らないとばかりに、体ごと顔を背けて。ただ、面倒くさそうにプロネーマへと指示を出した。

「やれやれ。雑魚共が。プロネーマ。お前の不始末だ。やれ!」