「汚点はすべて、取り除いてくれようぞ」
プロネーマが魔術の詠唱に入ると同時に、わたしの周りにいた天使たちのうち数人が彼女の援護にと飛び出していく。
まだ二人、天使は残っているけれど。これだけなら、無理やり振り払っていくことは可能だ。でもの隙にミトスくんのところへ行こうにも、他にも天使たちが集まってきていて、とても話の続きはできそうにない。
それなら……それなら、プロネーマや他の天使たちを倒して、もう一度落ち着いて話せる状況を作るしかない。非暴力として対話を選んだくせに結局戦うの、すごい本末転倒なうえに筋が通っていない気もするけれど……わたしはぐっと覚悟を決めるように目を閉じると、一番近くにいた天使を突き飛ばすと、そのままロイドたちの方へと駆け出した。
「粋護陣!」
帯を広げながら彼らの前に立って、プロネーマの魔術を防ぐ。
そうすれば、彼女は憎々しげにわたしを睨みつけてきた。
「おぬし、やはり我らの敵になるのかえ!」
「わたしが味方になりたいのはミトスくんであって、クルシスの味方になったことは一度もないよ!」
戦いたくないって言ったのに飛び込んできたことについては、そりゃあどの口が、と言われても仕方がないんだけど。
もうここまで来たら自棄だ。プロネーマ相手なら別に気にしないという身勝手な主張で押し切ることにする。
……いや、自分で言うのもなんだけど、本当に身勝手だな。こういうの、ミトスくんが嫌いな人間に近いかもしれない。ミトスくんと直接武器を交わさないなら戦うことを否定しないとか、他の人に冷静に指摘されたら何も言い返せないくらい、身勝手。
でもいい。身勝手でいい。
クルシスのやり方には賛同しないってずっと言ってるし、そのうえでミトスくんと戦いたくないっていう主張も揺らいではいない。これで、もうわたしと一緒になんていたくないって言うのなら……それでもいい。そうはっきり言ってくれるなら、それで。
「戯言を……食らうがよい、ダークスフィア!」
「みんなが一緒にいて、負けるわけがねえ! 驟雨双破斬!」
「その通りさ! 幽幻符!」
「そこを退け! 浮翔陣!」
プロネーマに攻撃しようとするみんなの道を作るように、わたしは周りの天使たちを吹き飛ばしていく。
数は、相手もこちらも同じくらいだ。いくつかの仕掛けを乗り越えてきた分、みんなは体力を消耗しているかもしれない。
それでも、誰も攻撃の手は緩めないし、足をふらつかせたりもしない。みんなが一緒だからと、お互いを庇い合いながら確実に相手にダメージを与えていく。
「焔の意志よ、災いを灰燼と化せ……エクスプロード!」
ジーニアスの魔術が直撃すれば、数人の天使たちが倒れ伏す。その威力を浴びれば、プロネーマも無視できないダメージを負っただろう。
けれど……わたしが言うのもなんだけど、彼女は本当にミトスくんに、ユグドラシルに心酔しているみたいだから。簡単に倒れてはなるものかと、ふらりとよろめきながらも、彼女は再び杖を握り直してこちらを睨む。
「おのれ……っ」
「逃がしません、崩襲地顎陣!」
「天月旋! 三散華! ……月華流麗!」
「くっ……愚か者め、スプレッド!」
プロネーマの繰り出してくる魔術の隙間を潜り抜けながら、わたしは地面を大きく蹴る。
彼のこと、彼の夢のこと、賛同してくれたのだろうたくさんの人達の中でも、きっと彼に近付こうと頑張ってくれたのだろう彼女に、感謝の気持ちがあったのも本当だ。
それでも、わたしは彼女たちと同じ道は選べない。一緒にいたいけど。一緒にいたいから。このやり方は認められないんだ。
手が熱い。エクスフィアから、いつも以上の力を感じる。燃えそうなほどのその力をそのままぶつけるように、思い切り帯を叩きつけた。
「獅咆爆炎陣!」
叩きつけた場所から衝撃が広がるように爆ぜる炎の中で、プロネーマは泣きそうに表情を歪めた。
「ユグドラシルさま……申し訳……ありません……」