ミトスくんに思い切り飛びつけば、彼の手から発せられようとした魔術が方向もタイミングも誤って、その場で暴発する。痛い。たぶん、今わたしの横腹をかすったのはそれだ。
でも、それだけ。痛いけど痛くない。ちょっとしたかすり傷と引き換えに、彼を捕まえることができたなら些細なことだ。
武器を構えていたロイドたちも、わたしのやりたいことがわかってくれたのだろう。説得したいって、わかってくれた。だから彼らは武器からは手を離さないけれど、一歩引いて、わたしたちを見守っている。
「ナギサ……?」
「もうやめよう。もういいんだよ、ミトスくん……」
どこか呆然とした様子のミトスくんを、わたしはがむしゃらに抱きしめた。
「四千年も、頑張ったね。だからもう、立ち止まったって……いいんだよ……マーテルさんだって、言ってたでしょう。もうこんなことはやめてほしいって。大丈夫、わたし、ちゃんとここに、いるから。一緒にやり直そう。今度こそ、一緒にいるから。約束したでしょう」
ミトスくんの過ごしてきた四千年とか、わたしには全然想像がつかない。
こんな世界の仕組みを作ったこととか、もう誰も救わないと決めたこととか、先ほどのプロネーマのこととか。わたしの知っているミトスくんから変わってしまったことも多くて、きっともう、知らないことの方が多い。
それでも。戦いたくないと泣いたわたしを気にかけてくれたこととか、事あるごとに声をかけてくれたこととか。あの頃と変わらない優しさもたくさん見つけてしまうから。わたしはそれを大事にしたい。手放したくない。
「さっきだって、戦いたくないってわたしが泣いたことを気にしてくれたんだよね、君はずっと優しいままで、ただ大好きなマーテルさんに会いたかっただけなんだよね。一人にしてごめんね。さっき言ったのは嘘でも何でもないの、本気だよ。わたし、一緒にいるから」
四千年も歩いてきた道を、急に立ち止まるなんて、すごく難しいと思う。わかってる。間違えているって言われたって、なかなか止まれない。
それなら、ゆっくりでもいいから。立ち止まって、もう一度歩き出すまで、時間がかかったっていいから。一緒にいるから。
わたしだけじゃない。ジーニアスだって一緒にいてくれるよ。ううん、きっとロイドだって、一緒に考えてくれる。これまでのことも、種族も、関係なく。みんなで一緒に未来を考えることは、できるはずなんだ。
「だから、もう止めよう。止めようよ……!」
「ナギサ……」
デリス・カーラーンになんていかないで。
これ以上、遠くへ行ってしまわないで。
そう、抱きしめる力を強くすれば、わたしの腕を彼の手がそっと撫でる。
そのことに安心した一瞬。
わたしの背後から、悲鳴が聞こえてきた。