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「どうして理解できないのだ。千年王国の理想を」
「たくさんの人を無意味に殺して、何が理想だ!」
「人間がえらそうなことをいうな」

体勢を立て直したロイドが剣を握り直すのを見て、ミトスくんが再び詠唱を始める。
彼の詠唱はとても早く、それでいて使う術は強力なものばかりだ。みんなはひとつの場所に固まらないように地面を蹴ると、そのまま自分たちの攻撃がしやすい距離から攻撃を始めた。

「万物に宿りし生命の息吹をここに、そして、我らに加護を……フェアリーサークル! 我らに聖なる加護を、あだなすものに制裁を与えたまえ!」

先ほどの戦闘で負った傷を癒すために、リフィルさんの治癒術が展開する。大きな光が地面を覆いつくして、体が軽くなる。けれど、わたしを縫い付ける魔法は消えない。
もう怪我なんてしても構わないかと思って力任せに動いてみようとするけれど、単純に体勢が悪いのだろう。上手に手足が動かなくて、剣によって傷つくというより、関節が痛い。

コレットが隙を見てこちらに駆け寄ろうとしてくれるけれど、それは許さないとばかりに彼女を取り囲むように雷が集まる。だめ、と叫んだ声を聞いて立ち止まったコレットの前で、雷が弾けた。

「滅びよ、ヴォルトアロー!」
「きゃあっ!」
「っく、行くよ、リーガル!」
「任せろ! 斬魔飛燕脚!」

こちらは気にしないでいいと叫んでから、もう一度ここから抜け出そうともがく。
ゆっくり、ゆっくり、足を持ち上げて。位置をずらして。ああ、くそ、ここを無理やり引っ張ったら帯が破れちゃうかもしれない、それはダメだ。服は破けたっていいけど、これはだめ。そんなこと言っている場合じゃないのはわかってる。でも、でも、よりによってミトスくんの前でこれを破くなんて、絶対にしたらダメ。
そうしたら、怪我を覚悟するしかない。あとで治してもらえば問題ないはずだ。腕の袖はもう引きちぎるようにして持ち上げて。思い切り腕を裂いて、剣の光が肌を焼いたけれど、気にしない。
痛い。痛い。痛いけど、いかなくちゃ。
戦わなくちゃいけないなら、戦わなくちゃ。

「くっそお……お前の姉さんの話や、ナギサの話、ちゃんと聞いてやれよ!」
「アウトバースト!」
「獅子千裂破!」

ユグドラシルの姿をしているミトスくんが、大きくなったその体で繰り出す魔力を込めた近接攻撃は重たい。彼を中心に広がる爆発を受けながら呼びかけるロイドの言葉に、彼はやっぱり答えない。
全員の攻撃をいなしながら戦う彼に、離れたところで詠唱をしていたジーニアスが、ぐっとこぶしを握るのが視界の端に映った。

「……姉さん!」
「わかっていてよ!」
「プリズミックスターズ!」

姉弟の複合技が、いくつもの星の軌道を描きながら降り注ぐ。
先ほどから見ていて、光属性の術はあまり効果がないみたいだったけれど。これだけ集中して攻撃を梳ければ、さすがに動きが鈍くなる。

「くっ……! ディースネル」
「うおおお! ……驟雨双破斬!」

わたしが自分の服を破って、手をようやっと上手に地面につけることができて。そうしたらもういっそ、帯を置いて飛びついてやるしかないかと足に力を込めた時。
ロイドの剣が、ミトスくんを大きく傷つけた。
彼の体が大きく傾いで、彼が、信じられないと、目を大きく見開いた。

「マーテルを助けるまでは……死ねない……」